ノウイング

2009/07/15 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン7)
50年前のタイムカプセルから取り出された驚愕の預言。
凄惨な事故のシーンは一見の価値あり。by K. Hattori

Knowing [Original Motion Picture Soundtrack]  宇宙物理学者のジョン・ケストラーは、事故で妻を失い、今は小学生の息子ケイレブと二人暮らし。愛する妻を失った心の隙間を、仕事と酒で埋める毎日だ。だがそんな無為の日々は、ケイレブが学校から持ち帰った1枚の「手紙」によって一変する。それは50年前の小学生が、50年後の後輩に託した「未来への手紙」。画用紙1枚にびっしりと埋め尽くされた細かな数字の中に、ジョンは恐るべき秘密を見出してしまう。それらの数字は、過去50年間に起きた大災害・事故・事件などの日付や死亡した犠牲者の数と、ピッタリ完全に一致していたのだ。ほとんどの日付は既に起きてしまった過去のものだが、いまだ起きていない未来の事件を示す日付がいくつかある。この手紙が未来の出来事を正確に伝えているのなら、間もなく81人が亡くなる大惨事が世界のどこかで起きるだろう。そして数日後、それはジョンの目の前で起きた……。

 ニコラス・ケイジ主演のミステリアスなサスペンス・スリラーで、アレックス・プロヤス監督の緻密な絵作りと演出もあって最後まで目が離せない。プロヤス監督は『クロウ/飛翔伝説』や『ダークシティ』からのお気に入り監督だが、スケールの大きな「異世界」を描かせると天下一品の才能を見せる。この映画でも飛行機の墜落や地下鉄事故など、日常の中に容赦なく飛び込んでくる「異世界」を見事に描ききっている。日常空間はあっという間に「異世界」に変貌し、人間はそこからもう二度と脱出することは出来なくなってしまうのだ。

 この映画をSFだと考える人は多いと思うが、じつはこれ、SF風の味付けをした宗教映画。そのための布石は、映画の序盤からかなり丁寧に行われている。「世界は必然か偶然か」という学生との議論。「天国か信じられるか」という息子との対話。牧師である父親との確執。主人公は科学者であり、運命や預言などをまったく信じない人間だ。しかしその彼が、50年前の小学生が残した「預言」に引き込まれてしまう。信仰を失った男が、目の前に示された出来事を通じて「世界に偶然などなくすべては必然だ」と思い知らされるのだ。

 映画に登場する「声を聞く子供たち」は、旧約聖書に登場する預言者たちを連想させる。映画ではエゼキエルひとりが紹介されているが、子供が何者かの声を聞くという部分はサムエル、預言から逃れようとして苦しむ部分はヨナ、光り輝く乗り物で地上から取り去られるのはエリヤだ。子供たちに接近する「囁く者たち」は、旧約聖書に登場する天使たち。その不気味な姿はジョン・ヒューストンの『天地創造』にも描かれていたが、今回の映画はそれをさらに不気味にしたようなものだ。最後は光り輝く翼を持つ存在となる。

 この映画はきわめて宗教的な意匠に彩られつつ、「信仰があれば救われる」という結論にならないのが痛快。すべては事前に決められているが、なぜそう決まったのかは誰にもわからない。

(原題:Knowing)

7月10日 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:東宝東和
2009年|2時間2分|アメリカ|カラー|シネスコ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://knowing.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ノウイング
DVD:Knowing
サントラCD:ノウイング
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ノベライズ:ノウイング
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