サブウェイ123 激突

2009/07/10 SPE試写室
地下鉄を乗っ取った犯人たちと地下鉄職員の息詰まる駆け引き。
設定の無理をパワフルな演出が強引に押し切る。by K. Hattori

Subway123  1974年のジョセフ・サージェント監督作『サブウェイ・パニック』を、トニー・スコット監督がリメイクしたサスペンス・アクション映画。オリジナルでウォルター・マッソーとロバート・ショーが演じた主人公を、今回はデンゼル・ワシントンとジョン・トラボルタが演じている。上映時間1時間45分はトニー・スコット流のめまぐるしい映像処理で埋め尽くされており、最初から最後まで目は釘付け。しかし映画を観ている最中も映画を観た後も、あちこちに釈然としないところが残る。

 ニューヨークの地下鉄が、4人組の男たちに乗っ取られる。犯人グループは列車を路線内に停車させると、運転手と乗客の身代金として市長に現金1,000万ドルを要求する。制限時間は1時間。それを過ぎたら、1分ごとに1人ずつ人質を射殺するという。地下鉄の管制センターでこの日たまたま路線担当をしていたウォルター・ガーバーは、犯人たちから交渉の窓口役に指定される。その間、市長は身代金の支払いに応じて準備を始めるが、連邦準備銀行の金庫から犯人たちがいる地下鉄まで行くには車が密集するマンハッタンの街並みを突っ切っていかねばならない。はたして現金は制限時間内に到着するのか?

 この映画には1970年代には存在しなかった、携帯電話やインターネットといった小道具が登場しているのだが、それが物語の本筋にほとんどからんでこないのが不思議だ。劇中では犯人がある方法を使って身代金以上の大金をせしめようとするエピソードが登場するが、犯人はネットでその推移を確認しているだけで、ネットを使って何かをしているわけではない様子。パソコンと無線通信を使った動画チャットも、もう少し有効な活用方法ができそうなのにそうしていない。結局この映画ではこうした最新テクノロジーが、原作にはなかった時代色を演出するための道具で終わってしまっている。

 しかしひょっとすると今回の脚色を担当した脚本家は、こうしたテクノロジーが生み出す新しい可能性を掘り下げていくことで、『サブウェイ・パニック』という映画の基本的な構造が壊れてしまうことを避けたかったのかもしれない。例えば映画中盤でスケールの大きなアクションを生み出すのが「制限時間内に現金が届けられるか?」というサスペンスだが、これは常識的に考えて、このような無理な大移動をさせる必要がないことが誰にでもわかる。市長が身代金引き渡しに応じて連邦準備銀行が出金に応じた時点で、それを犯行現場近くの他の銀行に振り替えて現金を用立てさせればいいのだ。コンビニATMやネットバンキングを日常的に使っている現代人なら、この程度のことはすぐに考えつくはず。それは脚本家だって十分わかっていたはずだが、この現金輸送がなくなれば『サブウェイ・パニック』という映画は成り立たないというのが、脚本家やプロデューサーの判断だったに違いない。

(原題:The Taking of Pelham 1 2 3)

9月4日公開予定 TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
2009年|1時間45分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、ドルビーデジタル、ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/thetakingofpelham123/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:サブウェイ123 激突
原作:サブウェイ123 激突(ジョン・ゴーディ)
関連DVD:サブウェイ・パニック(1974)
関連DVD:トニー・スコット監督
関連DVD:デンゼル・ワシントン
関連DVD:ジョン・トラボルタ (2)
関連DVD:ジョン・タトゥーロ
関連DVD:ルイス・ガスマン
関連DVD:マイケル・リスポリ
関連DVD:ジェームズ・ガンドルフィーニ
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