30デイズ・ナイト

2009/06/10 アスミック・エース試写室
30日間の夜が訪れる北極圏の町をヴァンパイアたちが襲う。
主演はジョシュ・ハートネット。by K. Hattori

30 Days of Night  アメリカ合衆国最北の町とも言われるアラスカ州バロウは、夏になれば日の沈まない白夜となるが、冬は1ヵ月も太陽が昇らない極夜となる。闇に閉ざされた冬の間は町の人口も激減。隣町まで百キロ以上、気温はマイナス数十度という、陸の孤島ができあがる。そんな町を、太古から闇に隠れて生きる魔物たちが襲う。雪と暗闇に閉ざされた町を狩り場とする魔性のハンターたちは、犠牲者たちの悲鳴をBGMにしながら喉笛からその生き血を飲み干すのだ。彼らこそ伝説のヴァンパイア。辛うじてその襲撃から逃れた人間たちは、1ヵ月後の夜明けまで生き延びることが出来るのか?

 スティーヴ・ナイルズとベン・テンプルスミスによる同名グラフィック・ノベルを、サム・ライミのプロデュースでデヴィッド・スレイドが監督したホラームービー。主演はジョシュ・ハートネット。小さな町がヴァンパイアたちに襲われるという話に、保安官夫妻の夫婦関係のこじれと関係修復のドラマをからめることで、凄惨なヴァイオレンスの果てに甘美なラブストーリーの余韻が残る映画となっている。主人公が最後の最後まで家族を守ろうと戦い続けるのに対し、圧倒的な超自然的暴力の前に家族を守れない人たちや、暴力と恐怖に屈して家族を守ることを放棄してしまう者たちを配置して対比させているのも上手い。平穏な日常の中では厄介者とされる人たちが、非日常の中で頼もしい姿を見せたり、普段は人々に親しまれ尊敬を受けている人が意外な弱さを見せるなど、登場する人物像はどれもリアルでバラエティに富んでいる。自分がもし同じ状況になったらどんな行動を取るだろうか? そんなことを考えさせられるエピソードの数々だ。

 しかしこれは、映画としてきわめて難しいことにチャレンジしている作品だ。映画を観ている人たちに登場人物たちと同じ「恐怖の30日間」を体験してもらわなければならないのだが、これはどう工夫しても困難極まりない。映画の中で何日間にも渡る時間の流れを表現するには、日中のシーンと夜間シーンを交互に出すのが常套手段。しかしこの映画の舞台は30日間夜ばかりだから、そうした当たり前の手段が使えない。常に着の身着のままで逃げ回っているため、服装の変化もない。せいぜい男性の髭が伸びるとか、毛髪が乱れてくるとか、その程度の変化しか作れないわけだ。しかしそれも、常に薄暗い画面の中ではこれといって大きな変化には見えなかったりする。

 映画は徹底したリアリズム指向。物語の舞台となるアラスカ州バロウは実在の町だ。ほとんどのヴァンパイア映画では人間が振るう斧の一閃で吸血鬼の首が切断されることになっているが、動き回る人間の首を切断するのはそれほど簡単じゃない。斧は2度3度と血の噴出する頚部に打ち込まれる。これまで何百本と作られているであろうヴァンパイア・ムービーの中でも、これはトップレベルのむごたらしさに違いない。

(原題:30 Days of Night)

8月22日公開予定 新宿ミラノほか全国ロードショー
配給:ブロードメディア・スタジオ
2007年|1時間53分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.30days-night.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:30デイズ・ナイト
原作シリーズ:30デイズ・ナイト
原作シリーズ:30 days of night
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