ココ・シャネル

2009/06/09 映画美学校第1試写室
20世紀を代表するファッションデザイナーの伝記映画。
シャーリー・マクレーンが貫禄たっぷり。by K. Hattori

Coco Chanel  現在も世界有数の婦人服ブランドとしてファッション界に君臨しているシャネルだが、この映画はその創始者ココ・シャネルの伝記映画。不幸な生い立ちからファッション界のトップになるまでの日々を、シャーリー・マクレーン扮する年老いたシャネルが回想していく。今年はオドレイ・トトゥがシャネルを演じる『ココ・アヴァン・シャネル』も公開されるなど、どういうわけかシャネルの伝記の当たり年。ヤン・クーネンの新作『ココ・シャネル&イーゴル・ストラヴィンスキー』も、来年には日本で公開される予定になっている。なぜ今シャネルなんだろう? ココ・シャネルは1883年生まれで1971年没だから、今年が生誕○○年や没後○○年という記念の年というわけでもない。それでもこれだけ立て続けにシャネルが取り上げられるということは、現代社会の有り様がどこかシャネルの生き方と響き合うものを持っているのかもしれない。(シャネルがパリで帽子のアトリエを開いたのが1909年、帽子店を開いたのが翌1910年だから、ブランドとしてのシャネルは設立100年ということなのかな……。)

 この映画はもともとテレビドラマとして制作されたもので、監督は『スクリーマーズ』や『アート オブ ウォー』のクリスチャン・デュゲイ。彼はここ10年ほどで、ジャンヌ・ダルクの伝記「ヴァージン・ブレイド」、第二次大戦中の悪名高い独裁者の伝記「ヒットラー」、人身売買を告発する「ヒューマン・トラフィック」など、大型のテレビ向け作品を次々に手掛けている。シャネルの伝記もそうした流れのひとつだろう。

 作品は2つのパートから構成されている。ひとつはシャーリー・マクレーンが演じる年老いたシャネルのエピソード。15年の沈黙を破って久しぶりに新作ファッションショーを開いたシャネルは、マスコミから酷評されて大きな挫折を味わう。しかし叩かれても倒されても、泥水の中から這い上がってくるのがココ・シャネル。「このぐらいの挫折はどうってことない。私の人生は失望の連続だったんだから」。ここから物語はシャネルの過去の回想になる。極貧生活の中で母を亡くし、父親に捨てられ孤児院で暮らした少女時代。18歳で住み込みのお針子として働き始めた彼女は、エチエンヌ・バルサンという青年将校と出会い、彼の愛人として贅沢な数年を過ごす。しかし彼の不誠実さに傷ついて別れ、帽子のデザイナーとして独立したものの、再び極貧生活に逆戻り。やがてバルサンの友人だったボーイ・カペルの支援を受けてファッション業界で成功するが、愛し合っていたはずのカペルは貴族の女と結婚してしまう……。

 物語はシャネルの生き方と共に、彼女の生きた「時代」を描写していくことを忘れない。コルセットからの開放、ポール・ポワレとのライバル関係、モータリゼーション、そして世界大戦。男たちが戦争に大量動員されたことで女性の社会進出が進み、それがシャネルの作るシンプルで機能的な女性服の流行を後押しした。現在の働く女性たちのファッションは、シャネル・ブランドでなくてもすべてシャネルの影響を受けている。

(原題:Coco Chanel)

今夏公開予定 Bunkamuraル・シネマ、TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館
配給:ピックス 宣伝:樂舎
2008年|2時間18分|イタリア、フランス、アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://coco-chanel-movie.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ココ・シャネル
DVD (Amazon.com):Coco Chanel
関連書籍:シャネル関連
関連リンク:シャネルの香水
関連DVD:クリスチャン・デュゲイ監督
関連DVD:シャーリー・マクレーン
関連DVD:バルボラ・ボブローヴァ
関連DVD:マルコム・マクダウェル
ホームページ
ホームページへ