腐女子彼女。

2009/04/02 シネマート銀座試写室
一目惚れしてつきあい始めた彼女は「腐女子」だった。
ブログに連載されていた人気小説の映画化。by K. Hattori

腐女子彼女。  イケメン大学生の諏訪ヒナタは、バイト先で知り合った2歳年上の先輩社員・白崎ヨリコに一目惚れ。デートに誘って交際を申し込んだ彼は、「わたし腐女子なんだけど、それでもいいのかな?」と言われたところで「フジョシ」の意味なんてわかりゃしない。それがアニメやボーイズラブ(BL)の世界に耽溺する超オタク女性のことだと知ったときには既に、彼の部屋はヨリコが持ち込んだエロゲーやBL同人誌、コスプレ用の衣装で埋め尽くされていた。友だちに紹介するからと連れて行かれた執事喫茶で、ヒナタは彼女の友人たちから「執事っぽいから名前はセバスチャン。略してセバス」なるありがた迷惑なあだ名を付けられ、それからはヨリコからも「セバス」と呼び捨てにされる羽目に。だがこんな暮らしが、ヒナタは少しずつ快感になっていくのだった……。

 ブログで連載されていた原作は「実話」と称しているそうだが、これが正真正銘ホントにあった話なのか、それとも実話と称したネタなのかは詮索しても意味がない。韓国映画『猟奇的彼女』もネットに書き込まれた「実話」だし、映画やドラマでもヒットした『電車男』だって「実話」ではないか。そもそも映画や小説といったフィクションの世界では、「これは実話である」とか「これは実際にあった物語を下敷きにしている」と断りながら100%のフィクションでも構わないという約束事が成立しているのだ。コーエン兄弟の『ファーゴ』はその最たる例だろう。

 原作は未読だが、映画は韓国映画『猟奇的な彼女』を強く意識したものになっていると思う。見た目は抜群にイイ女だが、性格と行動が常識外れのヒロインと、彼女に翻弄され続ける軟弱男の物語だ。タイトルも似てるし、インターネットで男が書いていた「実話」から生まれたという経緯も同じ。このあたりの経緯は物語の外側にある事情として横に置いておくとしても、ヒロインの気が強いところも両作品の共通点。ヘタレ男がヒロインに振り回されるドタバタは、今流のスクリューボール・コメディだと言っても構わない。しかし今どきは大金持ちのご令嬢(スクリューボール・コメディの定番設定)には映画的リアリティがないし、男顔負けの職業婦人(これまたスクリューボール・コメディの定番)というのもありふれている。男を翻弄する陽性ファムファタルには、暴力的な女とか、超オタク女とかがお似合いなのかも。少なくともこの映画のヒロインは、映画『電車男』で中谷美紀が演じたエルメスよりよほど生き生きして魅力的に思える。

 そんなわけで映画の序盤から中盤まではとても面白く観られた映画なのだが、主人公たちに別離の葛藤が生じる終盤になると途端につまらなくなる。ラブストーリーとしてはここがクライマックスのはずなのだが、それが映画に馴染んでいないのだ。ヒロインの「腐女子」という設定がどこかにすっ飛んで、ただのメロドラマになっているからだろう。

5月2日公開予定 シネマート新宿
5月23日公開予定 シネマート心斎橋
配給:エスピーオー 宣伝:マジックアワー
2009年|1時間37分|日本|カラー|ビスタ|DTSステレオ
関連ホームページ:http://fujoshi.gyao.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:腐女子彼女。
原作(コミック含む):腐女子彼女。(ぺんたぶ)
主題歌CD:恋のセオリー(バニラビーンズ)
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