非女子図鑑

2009/03/13 映画美学校第1試写室
個性的なヒロインが主役の6話オムニバス短編集。
作品によって完成度はバラバラ。by K. Hattori

 映画学校であるニューシネマワークショップが、映画プロデューサーコースの課題作品として製作した短篇オムニバス映画。学生が製作している映画ではあるが、中身はアマチュア作品というわけではない。プロデューサーは学生たちだが、監督も脚本も出演者たちは映画やドラマやCMの世界で活躍するプロばかりだ。そのため個々のエピソードは、内容的にも表現面でも商業作品としてのクオリティを持つものがほとんどだ。(残念ながら、そのレベルに達していないものもある。)

 タイトルにある「非女子」というのは、世間一般が考える「女子」の枠から外れたような行動をとる個性的な女性……程度の意味だろうか。ただしこれは各エピソードの中で、かなり自由に解釈されているように思う。とりあえずは「個性的なヒロインが主人公ならOK」ぐらいのゆるい縛りだ。上映時間1時間45分でエピソードは6つ。それを清水崇監督が撮ったオープニングとエンディングがサンドイッチにする構成。オムニバス映画の常で、エピソードには出来不出来のばらつきがある。正直言って第1話の「占いタマエ!」と第2話「魁!! みっちゃん」は、まだまだ作品の完成度が低いように思う。学生の課題作品を観ているような気分だった。

 個人的には、片桐はいりがヤクザ映画の男役オーディションを受ける第4話「男の証明(あかし)」のナンセンスさが好き。小さな会議室を舞台にしたワンセットドラマで、登場人物もプロデューサーと監督、オーディションを受けている俳優4人の計6名のみ。小劇場のコントみたいな内容でもあるけれど、これは映画の尺とドラマがうまく噛み合っていて、バランスのいい作品になっていると思う。監督は川野浩司。

 広く一般にウケそうなのは最終第6話の「死ねない女」。男に振られて自殺を決意したヒロインが、死んだ後に恥をかきたくないと部屋の掃除を始めたら止まらなくなって……という話。ヒロインの妄想の中に登場する三人組刑事の会話がテンポよくリズミカルに転がって、聞いていて耳に心地よい快感がある。この会話シーンは小劇場の芝居みたいなノリなんだけど、エピソード全体としてはヒロインを部屋の中からあちこちに動かして空間的な広がりを作りだしている。作品としての完成度は、おそらくこれが最も高いのではないだろうか。

 第3話「B(ビー)」はアイデアが奇抜ながら、遺跡発掘の女性現場監督が同僚で年下の男性調査員にほのかな恋心を抱くヒロインのキャラクターには好感が持てる。しかしヒロインが「非女子」であると同時に、相手の男性が「非男子」になってしまっているのはこの映画の欠点かもしれない。第5話「混浴 heaven」は温泉マニアの女性を主人公にした、ちょっといい話。長編映画の中の1エピソードになりそうな話で短篇としては少々パンチ不足だが、このヒロインが他の温泉を訪問するエピソードも観てみたい気になる。

初夏公開予定 渋谷シアターTSUTAYAほか全国順次ロードショー
配給:ニューシネマワークショップ、グアパ・グアポ
宣伝:グアパ・グアポ
2008年|1時間45分|日本|カラー|ビスタサイズ|DTSステレオ
関連ホームページ:http://hijoshi.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:非女子図鑑
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