チョコレート・ファイター

2009/03/04 映画美学校第2試写室
女の子にこんなことさせちゃっていいと思ってるのか!
過激なアクションはマジで痛そう。by K. Hattori

Chocolate  トニー・ジャー主演の『マッハ!』と『トム・ヤン・クン!』で世界中の度肝を抜いたプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が、再度世界中を仰天させるであろうアクション映画。今度の主人公は女の子。まだあどけなささえ感じさせる主人公の女の子が、群がる屈強な男たちを相手に、殴る、蹴る、飛ぶ、関節をきめる、投げ飛ばすの大活躍。トニー・ジャーがそうであったように、この映画にもスタントは存在しない。アクションはすべて、ヒロインを演じたジージャー本人が演じているのだ。監督はプロデューサーを務めた『七人のマッハ!!!!!!!』のオーディションで出会った彼女のアクションセンスに惚れ込み、すぐさま主演映画の製作を決意。企画を練りながら4年に渡ってみっちりと彼女をトレーニングし、ついに映画史上最強のヒロインを生み出したのだった。

 組織の先兵としてタイに進出した日本人ヤクザのマサシは、対立するタイ人マフィアのボス、ナンバー8の情婦ジンと愛し合うようになる。この関係はナンバー8に知られてマサシはひとり帰国するが、この時すでにジンはマサシの子供を身ごもっていた。生まれた女の子はゼンと名付けられてすくすく成長していくが、生まれつき自閉症の障害を持っていた。しかし彼女は家の隣のムエタイ・ジムやテレビのカンフー映画を見るだけで、それらとまったく同じ格闘技術を身に着けるという特殊な記憶力と身体能力を持っていた。母親が病気になって多額の治療費が必要になったとき、母の古い帳簿を見つけてかつて母が金を貸した相手から借金を取り立てるゼン。だがそれは、今なおジン母娘を監視するナンバー8との敵対を意味した。

 自閉症者の特殊な記憶力や天才的な計算能力などを取り上げた映画はこれまでにもあったが(例えば『レインマン』や『マーキュリー・ライジング』)、自閉症者が格闘技の天才だったという映画はおそらくこれが初めてではなかろうか。こんなことがあり得るのかどうかなんてことは、この際どうでもいいこと。そもそもこの監督の映画は、これまでもアクション優先、お話し二の次だった。映画の見どころはジージャーのアクションシーンであって、物語の設定や筋立てはそのアクションを成立させるための段取りに過ぎないのだ。

 この映画には香港アクション映画の影響が強いのだが、じつのところ作り手が本当に目指しているのは、ジャッキー・チェンの映画「本編」のアクションではなく、その後にオマケとして付いてくる「NG集」ではないだろうか。例えば傑作『プロジェクトA』のNG集には、ジャッキーが高所から落下して地面に激突し、激痛にのたうち回る様子が記録されている。この映画はそれをNGではなく、そのまま本編に取り入れようとしているように思えてならない。

 列車の高架を使った立体的なアクションが、この映画のクライマックス。このシーンだけでも、この映画を観る価値がある。

(原題:Chocolate)

5月23日公開予定 新宿ピカデリーほか全国ロードショー
配給:東北新社
2008年|1時間39分|タイ|カラー|ヴィスタ|ドルビーSRD
関連ホームページ:http://www.chocolatefighter.com/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:チョコレート・ファイター
DVD (Amazon.com):Chocolate
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