カンフーシェフ

2009/02/18 映画美学校第2試写室
中華の名店で修行した青年が料理勝負に挑む。
料理をネタにしたカンフー映画。by K. Hattori

 料理学校を優秀な成績で卒業したケンが、校長の紹介で料理修行のため訪れた中華の名店・四海一品。残念ながら頼みとしていた往年の名料理人シェンは既にこの世になく、彼の娘ふたりが切り盛りしている店は新興の高級料理チェーン・粤皇軒の脅威にさらされている。だがそこにふらりとやって来たのが、シェンの孫弟子にあたる料理人ピンイーだった。粤皇軒のオーナーである甥ジョーの陰謀で故郷の村を追われていたピンイーだったが、才能あふれるケンを指導することを通して少しずつ心の傷を癒していく。しかしピンイーの存在によって、四海一品に対する粤皇軒の嫌がらせはエスカレート。これを打開するため、ケンは4年に1度開催される中華料理コンテストに応募。見事予選を勝ち抜いたケンは、決勝戦で宿敵・粤皇軒の料理長ティエンに挑む。

 料理対決ものにカンフーの要素を取り入れた、荒唐無稽な娯楽アクション映画。料理学校の卒業式でなぜか大乱闘したり、宴会の席で料理人が大乱闘したり、生鮮スーパーで買い物中に主人公が大乱闘したり、料理人兄弟がカンフーで対決したり、料理人とレストランのオーナーが血みどろの死闘を繰り広げたりする。理由はそれぞれ(一応)説明されているのだが、これは話の本筋とはあまり関係のない映画の味付けであり、カンフー・アクションを物語に取り入れるための屁理屈だ。こうしたアクションシーンは、ドラマ仕立てのアダルトビデオにおける濡れ場みたいなもの。アダルトビデオの目的は濡れ場を描くことであって、ドラマはそのための方便に過ぎない。この映画でもアクションシーンを成立させるための方便として、料理人兄弟の確執だの料理人対決だのという理由が持ち出されてくるわけだ。

 そのためこの映画では、ドラマ部分は映画の脇役に過ぎない。そのドラマに花を添える元モー娘。の加護亜依など、脇役のさらに脇にいる添え物もいいところ。料理で言えば、ハンバーグステーキの横に添えられている付け合わせの温野菜の、さらに横に添えられているパセリみたいなものだ。ないよりはあった方がいいけれど、あったからと言ってそれを食して味わうというようなものでもない。一応今回は加護チャンにもアクションがあるんだけど、大勢のからみ相手の受動的アクションで、それだけでメインとなるものではない。加護亜依の芸能界復帰作という話題性から映画を観ると、「な〜んだ、この程度か」とガッカリするはず。これは最初から添え物だと割り切って観た方がいい。

 物語の基本的な構成はシンプルでわかりやすく、細かな説明を省いても映画が映画として成立する芯の太さがある。本来は説明的な芝居がもっとあったはずだが、それを乱暴にそぎ落としてアクションからアクションへと大胆につないでいくスピード感。「なぜ?」「どうして?」という疑問を持つ間もなく、話をどんどん先に進めていく強引さは爽快ですらある。

(原題:功夫厨神 Kung Fu Chefs)

4月公開予定 シアター・イメージフォーラム
配給:日本スカイウェイ
2008年|1時間30分|香港|カラー|ビスタサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.
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