大阪ハムレット

2008/12/05 松竹試写室
森下裕美の同名連作短篇コミックを実写映画化。
松坂慶子の貫禄が全体を引っ張る。by K. Hattori

大阪ハムレット (1) (ACTION COMICS)  「久保君はハムレットやな」という担任教師の言葉に、中学1年生の行雄はブチ切れる。彼の家は少し前に父が亡くなったばかりだが、その直後にやって来た父の弟と名乗るオッサンがそのまま家に居着いて母と夫婦同然の暮らしをしているのだ。行雄は3人兄弟。兄の政司は高校受験を控えた中3だが、街で出会った女子大生の由加に一目惚れ。見た目が年より老けている彼は大学生だと偽って、受験勉強そっちのけで由加とデートしている。三男の宏基は小学生だが、学校で「ボク、女の子になりたい!」と爆弾発言して大騒ぎ。それでもクラスメイトの後押しで学芸会のシンデレラ役に抜擢されて張り切っている。行雄は辞書でわからない言葉を調べながら「ハムレット」を読み進めるのだが、そんなさなかに母親の妊娠が発覚する……。

 「少年アシベ」や「ここだけのふたり!!」で知られる漫画家・森下裕美が、漫画アクションで連載している連作短篇オムニバス「大阪ハムレット」の実写映画化。原作は第10回文化庁メディア芸術祭優秀賞と第11回手塚治虫文化賞短編賞をダブル受賞するなど高い評価を受けていて、僕も単行本が出たときに購入して読んでいる。ただし原作はあくまでも短篇オムニバスなので、それをどう1本の映画にするのかは脚本家の腕の見せ所。今回脚色を担当した伊藤秀裕と江良至だが、原作単行本の1巻から3つのエピソードを抜き出し、それをひとつの家族の物語にまとめている。

 原作読者はどうしたって映画を原作と比べてどうこう言いたがるものだし、コミック作品の場合はもともとのビジュアル・イメージがあるからなおさらだ。原作読者である僕もそのあたりがどうしても気になってしまったのだが、各エピソードのアレンジ方法やキャスティングはこの映画の場合結構うまく行っていると思う。特に二男・三男のエピソードは原作のイメージにピッタリ。中三の長男が女子大生と恋をする話は、原作だと少年がもっと大柄な体格なので、キャスティング的にはどうなのかなぁ……という気がしないでもない。政司役の久野雅弘は実年齢(1988年生まれ)だと大学生でもおかしくはないのだが、なぜか実年齢で3歳年上でしかない加藤夏希と並ぶと、彼女よりずっと幼く見えてしまうのだ。加藤夏希の方が明らかに背が高いというのも、こうした印象を強める結果になっている。

 それぞれの方向に全力で突っ走っていく三兄弟のエピソードを、グイッと一箇所にまとめ上げているのは、母親を演じた松坂慶子の貫禄と存在感。彼女が発する強力な磁場の中で、三兄弟やオッチャンも含めた男たちがひとつの「家族」として熟成していく。映画冒頭でふらりと久保家にやってきたオッチャンが、最後はすっかり家族の顔になっているのがいい。この映画の本当の主人公は、原作では脇役だったこのオッチャンかもしれない。岸部一徳も上手い!

1月17日公開予定 シネスイッチ銀座、シネ・リーブル梅田ほか
配給:アートポート 宣伝:グアパ・グアポ
2008年|1時間47分|日本|カラー|アメリカンビスタ|DTS STEREO
関連ホームページ:http://www.osaka-hamlet.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:大阪ハムレット
主題歌「会いたくて...」収録CD:DIAMOND WAVE(初回限定盤)(DVD付)(倉木麻衣)
主題歌「会いたくて...」収録CD:DIAMOND WAVE(倉木麻衣)
原作コミック:大阪ハムレット(森下裕美)
関連DVD:光石冨士朗監督
関連DVD:松坂慶子
関連DVD:岸部一徳
関連DVD:森田直幸
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