親友から海辺のプチホテルの留守番を頼まれたバツイチ女性が、季節外れに訪れたハンサムな中年外科医と恋に落ち、愛し合うという物語。原作は『きみに読む物語』のニコラス・スパークス。主人公エイドリアンを演じるのはダイアン・レイン、外科医のポール・フラナーを演じるのはリチャード・ギアという美男美女コンビ。基本的にはこのふたりだけの芝居で進行していく物語だが、重要な脇役にスコット・グレンやジェームズ・フランコといった実力者を配置しているのは立派。ただしこの映画自体が、それで立派な仕上がりになっているかというと、決してそうはなっていないところが困りものなのだ。
アクション映画ではなく、サスペンスでもなく、大人のラブストーリーだ。登場人物はごくわずか。中心になるのは主人公たちの会話であり、物語の舞台は海辺のホテルからほとんど移動することがない。これは名優が共演する「ふたり芝居」なのだ。脇の登場人物も出てくることは出てくるが、これは家具や風景の一部であって、そこから主人公たちのドラマが大きく発展していくわけではない。おそらくこの物語は、男女1名ずつの俳優が演じる舞台劇にも容易に翻案できるに違いない。しかしこの映画の場合、そう思わせてしまうこと自体がもうダメなのだ。
原題は「ローダンテの夜」という意味。ローダンテというのはノースカロライナ州のパムリコ湾をぐるりと取り囲む、アウターバンクスと呼ばれる細長い砂州の島にある小さな町。せっかくだから物語にこうした土地柄の名物や風景を積極的に取り込んでいけばいいのに、この映画は小さなホテルからほとんど外に出て行かない。僕は映画を観た後に地図を調べて、ようやくローダンテという土地の様子が理解できた。魅力的なロケーションなのにそれを生かせていないのは、まるで映画的なセンスがないとしか言えない。映画の前半では、砂の吹き付ける荒涼とした風景と海辺に孤立しているホテルに主人公たちの心を象徴させているのだろう。ならば映画の中盤から後半では、同じ風景がまったく違った暖かさと温もりを感じさせる風景へと変貌していく様子を見せなければならないだろう。
もちろん脚本の上では、この風景の違いを明確に描き分けるチャンスがきちんと与えられているのだ。ホテルに襲いかかるハリケーンをクライマックスにして、その前後できちんと風景を違ったものとして描くきっかけが用意されている。でもこの映画は、ローダンテという街に主人公たちの心を語らせる機会をことごとく潰している。感情の変化を、俳優の表情や演技で表現することにこだわる。
結果としてこの映画は、俳優のクロースアップを多用する羽目になった。カメラアングルはほとんどが顔のアップやバストショット。まるでテレビドラマのように、大きな画面にリチャード・ギアとダイアン・レインの顔だけが大写しされる。まるでテレビドラマだ。
(原題:Nights in Rodanthe)
DVD:最後の初恋
サントラCD:最後の初恋 サントラCD:Nights in Rodanthe 原作:最後の初恋(ニコラス・スパークス) 原作洋書:Nights in Rodanthe (Nicholas Sparks) 関連DVD:ジョージ・C・ウルフ監督 関連DVD:リチャード・ギア 関連DVD:ダイアン・レイン 関連DVD:スコット・グレン 関連DVD:ジェームズ・フランコ |