ベガスの恋に勝つルール

2008/07/31 20世紀フォックス映画試写室
ベガスで当てた300万ドルを巡る男女の結婚狂想曲。
スクリューボールコメディの楽しさ。by K. Hattori

What Happens in Vegas (Widescreen Edition)  同棲中の恋人にこっぴどく振られて大ショックのジョイと、ギャンブル好きがたたって父親の工場からクビを言い渡されたジャックが、憂さ晴らしに出かけたラスベガスで出会う。しこたま飲んで陽気に浮かれ騒ぎ、ヘベレケに酔っぱらったまではよかったが、その勢いで結婚式場に飛び込んでしまったのは悪ノリが過ぎた。翌朝見ず知らずの相手との結婚を円満に解消しようとした矢先、ふたりの目の前でスロットマシンが大当たり! ところが当選金300万ドルを等分しようにも、ふたりが結婚しているから話がややこしい。判事は身勝手な言い争いをするふたりが、神聖な結婚をいかにも軽んじていることに立腹。当選金の差し押さえと、半年間の強制的な結婚生活を命じるのだが……。

 気の強い女とそれに負けず劣らず気の強い男が、互いに相手を出し抜こうと熾烈な戦いを繰り広げながら、最後は本当の恋に落ちて結ばれるという物語。主人公たちの周囲にも、常識外れの言動をする風変わりな友人たちが大勢いて、状況が状況とはいえ登場人物は変人ばかり。こうした映画はスクリューボールコメディといって、ハリウッドでは1930年代から盛んに作られている。この映画はその子孫であり、最新作というわけだ。

 この手の映画は始まった瞬間から、観客は主人公たちが最後に結ばれるであろうことを知っている。当人たちがどんなに離ればなれになろうともがいても、ゴール地点はあらかじめ決められているのだ。観客はそこに向かっていく過程にある、さまざまなスリルとサスペンスを楽しめばいい。こういうものは、安全が絶対保証されている遊園地のアトラクションみたいなもの。どんなにブンブン振り回されようと、ジェットコースターは絶対にレールから離れない。その前提があるから、猛スピードで急カーブに突っ込もうと、急激な上昇と下降を何度も繰り返そうと、宙返りしようとスピンしようと、客はワーワーキャーキャー叫びながらそのスリルを楽しむことができる。スクリューボールコメディの楽しさとは、おそらくそんなところにあるのだと思う。

 いがみ合うカップルをいかに接近させたままにさせておくか、というのがスクリューボールコメディに必須のカセ。この映画ではそのカセとしてスロットマシンの高額当選金を持ち出し、さらに裁判所命令というカセでがんじがらめにしてある。これは主人公たちを無理矢理にでも同居させるための映画的口実なので、お金そのものはじつのところどうでもいいものなのだ。金のからむ話はドロドロした人間の欲望がむき出しになるものだが、この映画には見事にそれがない。だからこそ、映画のラストも爽やかな後味になるのだ。

 いろいろ苦労はしているけれど、スクリューボールコメディという古典ジャンルを、現代風に仕立て直すことには一応成功している映画だろう。キャメロン・ディアスもチャーミングでした。

(原題:What Happens in Vegas)

8月16日公開 有楽座ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
2008年|1時間39分|アメリカ|カラー|シネスコ|ドルビーSR、SRD、DTS
関連ホームページ:http://www.vegakoi.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ベガスの恋に勝つルール
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関連DVD:トム・ヴォーン監督
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