インディ・ジョーンズ

クリスタル・スカルの王国

2008/07/04 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン4)
19年ぶりに作られたシリーズ第4弾はさらなる続編への序章。
出演者も作り手も年を取ったよなぁ。by K. Hattori

インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国 オリジナル・サウンドトラック  映画の冒頭に流れるのは、プレスリーが1956年に発売した大ヒット曲「ハウンド・ドッグ」。『インディ・ジョーンズ』シリーズの4作目は、1930年代後半を舞台にしていた過去3作からずっと時代が下った1950年代後半を舞台にしているのだ。3作目の『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』が作られてから19年たっているのだが、映画の中でもほぼそれに匹敵する時間が流れたことになる。

 このシリーズは過去3作も荒唐無稽な馬鹿話ではあったが、今回の映画はその馬鹿話に芸がないため、お話し全体が白々しくなってしまった。結局このシリーズを成り立たせていたのは、第二次世界大戦前の1930年代という「時代」だったのだ。エジプトでツタンカーメンの墓が発見されて考古学の大ブームが起きたのは、『インディ・ジョーンズ』で描かれた時代のたった15年前に過ぎない。ミイラの呪いは世界中の人びとを震え上がらせた。当時の考古学は「冒険」そのものだった。世界にはまだ人跡未踏の「秘境」がたくさん残されて、そこには知られざる古代文明の痕跡や遺物が手つかずで残されていた。

 しかし1950年代の世界はどうだろうか? 空にはジェット機が飛び、地上では核爆弾が炸裂する時代だ。今回の映画の舞台となる1957年は、世界で最初の人工衛星スプートニクが打ち上げられた年でもある。人工衛星や核ミサイルの時代に、インディ・ジョーンズが冒険をする余地は残されていないように思える。1950年代はイアン・フレミングが「ジェームス・ボンド」シリーズを書き始めた時代。東西冷戦の緊張状態の中で、インディ・ジョーンズが1930年代と同じように活躍する場所は極端に狭まってしまうのだ。

 結局今回の映画が目論んでいるのは、1930年代のヒーローだったインディ・ジョーンズに有終の美とも呼べる最後の華々しい活躍の機会を作って引退させ、原子力時代や宇宙時代にふさわしい新しいヒーローへとバトンタッチさせることなのだ。インディには結婚して家庭人になってもらう。それどころか子供のいるパパになってもらう。家族という手枷足枷が付いてしまえば、もう命がけの冒険は許されない。インディは残りの人生を、大学の考古学教授として終えることになるだろう。

 そんなわけで今回の映画は1980年代のハリウッドが生み出したスーパーヒーローのための、引退記念興行みたいな作品なのだ。正直言って還暦近いインディ(彼は1899年生まれという設定なので、1957年には58歳。演じているハリソン・フォードは撮影時に65歳)が体を張ってアクションを演じる様子は見ていて痛々しい。20年ぶりに再会したマリオンと、丁々発止のスクリューボール・コメディを再現してみせるくだりも、懐メロ番組で舟木一夫が詰め襟姿で「高校三年生」を歌っているのを見るのと同じような恥ずかしさだ。懐かしくて嬉しい。でも観たくなかった……。

(原題:Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull)

6月21日公開 日劇1ほか全国東宝洋画系
配給:パラマウント
2008年|2時間4分|アメリカ|カラー|シネスコ|SDDS、DTS、Dolby Digital
関連ホームページ:http://www.indianajones.jp/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
関連DVD:インディ・ジョーンズ・シリーズ
サントラCD:インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
サントラCD:Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull
ノベライズ:インディ・ジョーンズクリスタル・スカルの王国
関連書籍:メイキング・オブ・インディ・ジョーンズ -全映画の知られざる舞台裏-
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