ボビーZ

2007/10/03 SPE試写室
ポール・ウォーカー主演のサスペンス・アクション映画。
テンポの良さで最後まで楽しませる。by K. Hattori

 ティム・カーニーはガキの頃から札付きのワル。裁判所命令で懲罰として海兵隊に入隊させられたりしたものの、除隊した後はつまらない事件を繰り返してスリーアウトの長期刑。だが刑務所の中でもいざこざを起こし、他の囚人たちから命を狙われる始末。そんな彼の前に、鳴く子も黙るDEA(麻薬取締局)がぶら下げた1本のニンジン。それは伝説のサーファーにして大物麻薬ディーラーのボビーZに成りすまして、メキシコの麻薬組織に捕らえられた潜入捜査官との人質交換に応じることだった。刑務所にいればいずれ殺される。メキシコに行っても命は危ないが、隙を見て逃げ出せばあとは警察も追ってこない自由の身になれる。だがこの取引には裏があった。DEAのクルーズが裏切ったのだ!

 ポール・ウォーカー扮する小悪党が、次々に危機に陥っては辛くも脱出していくサスペンス・アクション映画。全体の味付けはかなりコミカルなもので、クスクス笑ってしまう場面も多い。手に汗握る深刻さより、お次はどうなるかと期待にハラハラドキドキさせられる映画だ。主人公は確かに悪党なのだが、その犯罪も底の浅いケチなものばかりで、映画に登場する他の大物たちに比べるとまったく憎めない。登場するのは悪人ばかりだが、その中ではティムなど小物もいいところ。ティムは悪人でありながら、映画を観る普通の観客のごく身近にいそうな人物として描かれているのだ。

 映画の見どころのひとつは数々のアクションシーンで、特にティムがドン・ワテロの屋敷から逃げ出す一連のシーンは面白く観られる。馬を奪って飛び出した後、それをバイクに換えるあたりは上手い。砂漠の岩山での戦いも面白い。

 しかしこの映画の面白さは、映画の最初から最後までよどみなく流れる物語のスピード感とテンポの良さにある。物語は決して立ち止まることなく、ポンポンと先に進んでいく。その間に、喉笛をかき切られて死ぬ男もいれば、ライフルで脳みそを吹き飛ばされる男、車で引きずられてボロ雑巾のようにされる男、銃で蜂の巣にされる男、爆弾で細切れのミンチにされる男など、行く先々には死体の山。ところがこの映画、まるで血なまぐさい印象がない。殺人や流血の場面は物語の中で記号化され、主人公に陰惨な血の臭いが染みつくことはない。

 この映画にポール・ウォーカーというキャスティングは打って付けだった。どんなに深刻ぶってみせても薄っぺらにしか見えない彼のキャラクターが、この映画のティム・カーニーという役にぴったりなのだ。キャラクターに深みを出すため、いろんなエピソードを付け足していないのもいい。物語に必要な最小限度の情報しか、この主人公には付加されていない。これは他の登場人物も同じことだ。登場人物全員が平板で薄っぺら。性格には裏も表もなく、物語の展開によって変化はしても成長はしていない。それが清々しく爽快なのだ。

(原題:The Death and Life of Bobby Z)

11月17日公開予定 ユナイテッド・シネマ豊洲、渋谷Q-AXほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給・宣伝協力:ドリーム・アーツ・ピクチャーズ
2007年|1時間36分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/bobbyz/
関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:ボビーZ
DVD (Amazon.com):Bobby Z
原作:ボビーZの気怠く優雅な人生
原作洋書:The Death and Life of Bobby Z (Don Winslow)
関連DVD:ジョン・ハーツフェルド監督
関連DVD:ポール・ウォーカー
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