プレステージ

2007/06/11 TOHOシネマズ錦糸町(スクリーン4)
19世紀末。ライバル奇術師同士の命をかけた戦い。
壮絶なエンディングに驚かされる。by K. Hattori

 19世紀末のロンドン。売れっ子奇術師のアルフレッド・ボーデンが、ライバルの奇術師ロバート・アンジャーを殺した容疑で逮捕される。かつて同じ奇術師のもとで息の合った助手として働いていたアンジャーとボーデンは、ステージ上でアンジャーの妻が事故死したことをきっかけに、互いに憎しみを燃やす生涯のライバルとなった。この事故の際、アンジャーの妻のロープを結んだのがボーデンだったのだ。アンジャーは妻の死の責任がボーデンにあると考え、ボーデンを破滅させるという考えに取り付かれていく。独立して場末の小屋で危険な奇術を披露し始めたボーデンを、客に紛れたアンジャーが銃撃したのも当然のことだった。ボーデンはアンジャーの放った銃弾によって、左手の2本の指を失う羽目になる。手先を使う奇術師にとって、これは大きな痛手だ。かくしてふたりの反目と憎悪は、いやが上にも高まっていく。ふたりが互いを殺したいばかりに憎んでいたことは、ロンドン中で知らぬ者なき周知の事実だったのだ……。

 『メメント』や『バットマン ビギンズ』のクリストファー・ノーラン監督が描く、19世紀末の奇術黄金時代。この時代のショービジネス界では、何をさておいてもステージ・マジックこそが最大の呼び物だった。やがて奇術は映画人気に押されてショービジネスの花形の地位を追われるのだが、この映画が舞台にしている19世紀末から20世紀初頭にかけての時代は、庶民も貴族もみんなが奇術に夢中になっていた時代なのだ。この映画の最大の見どころは、そんな奇術黄金時代の様子を、当時の社会情勢を絡めつつ巧みに再現していることだろう。

 映画に登場する「偉大なダントン」ことロバート・アンジャーと「ザ・プロフェッサー」ことアルフレッド・ボーデンは架空の人物だろう。しかし映画の重要なキーマンとなる、アメリカの発明家ニコラ・テスラは実在の人物。劇中ではテスラとエジソンの確執が描かれているが、これもだいたい史実に沿ったものだ。

 アンジャーの死とボーデン逮捕から物語が始まり、獄中のボーデンに死んだアンジャーの手記が差し入れられ、さらにその中で、盗み出されたボーデンの手記の話が出てくるという入り組んだ構成。回想シーンの中で、アンジャーは新しい奇術のネタを求めてロンドンからアメリカに渡ったりもする。物語の中では現在と過去、ロンドンとアメリカのエピソードがめまぐるしく交錯していく。しかしながら、ストーリーを追うのに混乱することはない。全体をひとつの統一したトーンでまとめつつ、コスチュームや美術、メイクなどで、巧みに時代の流れや場所を明示していく。時間や空間の処理としては『メメント』より何倍も複雑になっている映画なのだが、それでいて観る者を混乱させない手腕は大したものだ。映画に仕込まれたトリックは途中でわかるが、その途端、全体に張り巡らされた伏線に感心してしまう。

(原題:The Prestige)

6月9日公開 日比谷スカラ座1ほか全国東宝洋画系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2006年|2時間10分|アメリカ、イギリス|カラー|シネマスコープ|SDDS、Dolby Digital、DTS
関連ホームページ:http://prestige.gyao.jp/
DVD:プレステージ
DVD (Amazon.com):The Prestige
DVD (Amazon.com):The Prestige [Blu-ray]
原作:〈プラチナファンタジイ〉 奇術師
原作洋書:The Prestige (Christopher Priest)
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