サンシャイン2057

2007/03/12 20世紀フォックス試写室
人類を救うため太陽に向かった宇宙飛行士の見たものは?
ダニー・ボイル監督のSFスリラー。by K. Hattori

 SF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』が作られたのは1968年。それから40年近い時間が流れたが、『2001年宇宙の旅』は今なお「宇宙SFの古典」として映像製作者たちを呪縛し続けているらしい。『スター・ウォーズ』のような活劇なら一向に構わないのだが、シリアスなハードSFをやろうとすると『2001年』と比べられてしまう。いかにして『2001年』から逃れるかが、このジャンルの映画を新たに作ろうとする人の課題になる。しかし『サンシャイン2057』の製作者たちは『2001年宇宙の旅』から離れようとするのではなく、むしろ似ている部分は『2001年宇宙の旅』にわざと似せてしまうことで偉大な古典の呪縛を断ち切ろうとしているように見える。

 太陽の活動が不活発化して、地球が冷たい氷に閉ざされてしまった近未来。人類は太陽を再び活性化させるべく、宇宙船イカロス2にありったけの核弾頭を積み込んで太陽に向かわせる。準備は万全。ただひとつの気がかりは、半年前に同じ任務で太陽に向かったイカロス1が行方不明になっていることだ。長い旅も終盤に差し掛かった時、イカロス2はかすかな救難信号をキャッチする。それは行方不明になったイカロス1が発したものなのか? 任務を優先するか、それとも救難信号の発信源へと向かうか? イカロス2の乗組員たちは重大な決断を迫られる。

 映画は『2001年宇宙の旅』に似ている場面が多くある。例えば宇宙船から地球にメッセージを送る場面。宇宙船のコンピュータと対話する場面。宇宙服を着て船外作業をする場面。乗組員たちが気密服なしで宇宙に飛び出す場面など、大小合わせるとあちこちに『2001年』の断片がちりばめられている。しかしこの映画では、要所で表現を『2001年』と正反対にしてみせる。例えば宇宙船が向かう先は、『2001年宇宙の旅』では地球から太陽系の外側に向かった木星。それに対してこの映画では、太陽に向かって宇宙船が飛行する。まるで逆方向なのだ。また映画のクライマックスでは、『2001年宇宙の旅』が人間の手によってコンピュータを停止させようとするのに対し、この映画では人間が必死にコンピュータを復活させようとする。そして『2001年宇宙の旅』は物静かで哲学的な雰囲気の漂う作品だったが、『サンシャイン2057』は派手なアクション・ミステリー映画なのだ。

 真田広之主演映画として紹介されているが、実際の主演はキリアン・マーフィ。真田広之にはもう少し、役の上での特徴や工夫が欲しかった。これは「演技」の問題ではなく、「脚本」の問題だし、キャスティングの問題でもあるのだ。俳優の持つ存在感やカリスマ性ということで考えると、この役はいっそのこと、共演しているミシェル・ヨーと配役を入れ替えてしまってもよかったかもしれない。真田広之にはがんばってほしいけれど、今回の映画はちょっと残念なできばえだ。

(原題:Sunshine)

4月14日公開予定 有楽町スバル座ほか全国ロードショー
配給:20世紀フォックス映画
2007年|1時間48分|イギリス|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://movies.foxjapan.com/sunshine2057/
DVD:サンシャイン2057
関連DVD:ダニー・ボイル監督
関連DVD:キリアン・マーフィ
関連DVD:真田広之
関連DVD:ミシェル・ヨー
関連DVD:クリス・エヴァンス
関連DVD:ローズ・バーン
関連DVD:トロイ・ギャリティ
関連DVD:ベネディクト・ウォン
関連DVD:クリフ・カーティス
ホームページ
ホームページへ