輝ける女たち

2007/02/08 CINEMART銀座試写室
ニースの古風なキャバレーを舞台にしたホームドラマ。
中年男の独り立ちにちょっと感動。by K. Hattori

 自立だの親離れだのという言葉は、青少年のためにあるものだ。しかしこの映画では、50過ぎのオヤジが家族から独立し、自立への一歩を踏み出すことになる。物語の舞台はフランス南東部のリゾート地ニース。そこで何十年も続く小さなキャバレー「青いオウム」のオーナー、ガブリエルが急死し、彼の息子も同然だった奇術師ニッキーは離ればなれになっていた家族をニースに呼び戻す。葬儀は滞りなく終わったが、ガブリエルの遺言状の中身を知ってニッキーは仰天する。店や屋敷を含めた財産のほとんどは、ニッキーではなく、その子供たちに相続されることになっていたのだ。ニースに移り住むつもりも、キャバレーの経営者になるつもりもない子供たちは、赤字続きの店をさっさと処分するつもりだという。すっかりふて腐れたニッキーは、自分の身の振り方を考えなければならない羽目になる。

 人間関係が複雑で、それを飲み込むまでに映画の半分かかってしまった。ガブリエルとニッキーに血のつながりがないことや、ニッキーと元妻や子供たちとの関係、そして過去の出来事など、映画が始まってもすぐにはわかりにくい。映画をぼんやり観ていたせいかもしれないが、これは脚本なり、日本語字幕なりに、わかりにくさを生み出す何らかの原因があるように思えてならない。ニッキーと元妻たちとの関係など、いったい何がどうなっているのか最後までわからないではないか。このあたりは映画の序盤で、コンパクトに説明しておいてほしかった。映画の最後にはバラバラのピースがすべて集まるように全体が見えるのだが、この映画は最後の最後に観客に「ああ、そうか!」と思わせるのが目的ではないはず。登場人物の気持ちに観客を感情移入させるのが目的なら、もう少し早い段階で人間関係の概略がわかるような手順を踏んでほしかったと思う。

 キャバレーでのショーの様子などはじつに楽しく描けているが、それが今となってはきわめて古風で時代遅れなシロモノであることもよくわかる。店の様子がまるで1950年代のMGMミュージカルみたいなのだ。こうした店をてこ入れして立て直すには、むしろ店に馴染みがない若い経営者の方が過去のしがらみがなくていいのかもしれない。ニッキーの子供たちや若いバーテンなどを登場させて、店が若い世代に引き継がれていくことを暗示しているのはいい。店から離れたニッキーも、いずれは一回り大きく成長して、再び店に戻ってくるかもしれない。

 映画に登場したとき、ニッキーはただの中年オヤジだ。若い歌手(エマニュエル・ベアールだから40過ぎだけど)を口説こうとニヤニヤし、店のオーナーが死んだ後も自分が店を相続できると安心しきっている。彼はどう見ても「守りの人」なのだ。その彼がすべてを失って町を出て行くわけだが、その姿のなんと清々しいこと。彼はここからまた、新しく自分の人生を切り開く旅に出る。なんか、かっこいいぞ!

(原題:Le H?ros de la famille)

GW公開予定 Bunkamuraル・シネマ
配給:ムービーアイ
2006年|1時間43分|フランス|カラー|シネスコサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.kagayakeru-movie.com/
DVD:輝ける女たち
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