クラブ通いがばれて高校を退学になり、行き場をなくしたミウとよしかは、同じように行き場のないダンス好きの女子高生ジュリに誘われるまま、繁華街のはずれの駐車場で踊り始める。やがてジュリがレコード会社にスカウトされ、ミウとよしかはともえと愛子のふたりと組んで、ジュリのバックダンサーとしてデビューすることになる。ユニット名は「ジュリ&バックダンサーズ」。ところが人気絶頂でジュリが突然の電撃引退宣言。残された4人は会社との契約を破棄されそうになるのだが……。
平山あや、hiro、ソニン、サエコの4人が本格的なダンスを披露する、おそらくは本邦初の本格ダンス映画。監督はフジテレビで数々のドラマを手がけてきた永山耕三で、これが映画監督としてのデビュー作だという。脚本は永山監督と衛藤凛の共作。映画冒頭は2010年から始まり、ダンサーを目指す少女たちの中でヒロインたちが伝説の存在になっているという設定。そこから時代が2002年まで戻って物語本体が語られ、最後にまた2010年のシーンに戻るというマヅルカ形式になっている。
このマヅルカ形式によって、主人公たち4人の成功は観客にあらかじめ予告される。こうした脚本の構成が、どれだけの効果を持つのかはよくわからない。せいぜい観客が映画を観ながら、「そんなにうまく行くはずないじゃん!」とツッコミを入れるのを抑止できる程度か。物語がどんなにご都合主義でも、どんなに荒唐無稽でも、映画の最初に「主人公たちは成功した」と言われているのだから仕方がない。案外この最初と最後のシーンは、物語の弱さをカバーするために最後に追加撮影(あるいはシナリオに加筆)されたのかもしれない。
映画導入部の一人称ナレーション手法が途中で放棄されることも含めて、このシナリオには統一感がない。一度解散しかけたバックダンサーズが駐車場で再結集する場面は映画のターニングポイントになるシーンだが、この場所をなぜともえと愛子が知っていたのか謎だし、ここで口にされる「私くやしいよ!」という台詞も、いったい何がどうくやしいのか焦点がボケている。恋愛がらみのエピソードも取ってつけたような印象だし、これは映画の脚本としては、まったくオソマツなできとしか思えない。
しかしこの映画は、ダンスシーンの迫力で弱点の多くをカバーしてしまっている。お話は30点でも、見せ場であるダンスシーンが90点なので、全体としては60点ぐらいの及第点になっている印象だ。見どころはクラブでのダンスバトルと、クライマックスのライブシーン。これは大画面だと余計に迫力があって、観ていてワクワクしてくる。このクライマックスで物語にもう一波瀾ほしかったところだが、それがないのが「お話30点」の限界か。配役は豪華で、陣内孝則とつのだ☆ひろが、中年ロック・ミュージシャン役で出演しているのも楽しい。
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