GiNGA/ジンガ

2006/04/05 メディアボックス試写室
プロのサッカー選手になれるか否かは運次第。
サッカー王国ブラジルのすごさ。by K. Hattori

 プロのスポーツ選手になろうと思えば、よほどの実力がなければダメだ。逆に実力と当人のやる気さえあれば、間違いなくプロにはなれるだろう……。日本ではスポーツに対して、そんな考えを持つ人が多いのではないだろうか。しかしブラジルでは違う。サッカーが盛んなブラジルでは、どの町に行ってもサッカーがとてつもなく上手い子供たちがゴロゴロしている。その中でごく一部の子供だけが、プロのクラブチームへの所属を許されるのだ。どんな小さなクラブでも、入団テストの日には何十人もの子供たちが集まる。そして実技テストの末に入団が許されるのは、そのうちのわずか数名だ。クラブによって選考の基準が違い、テクニック重視のところもあれば体格重視のところもある。チームの弱点を、即戦力で強化したいと考えているところもあるだろう。かくして人並みはずれた実力を持ちながら、いつまでも入団が許可されないサッカー少年たちが入団テストに殺到することが繰り返されるのだ。

 この映画はサッカー王国ブラジルの底辺を支えるサッカー少年たちの姿を、オムニバス風に紹介するドキュメンタリーだ。タイトルの『GiNGA/ジンガ』というのは、ブラジルの格闘技カポエイラから生まれた軽い身のこなし、あるいはサッカーにおけるフェイントなどの足さばき、もしくはブラジル人特有のしなやかな身体性や精神性などまで意味する言葉だとか。映画に登場するのは10人の少年少女たちだが、そのボールさばきの超絶技巧にはびっくり! 脚が鞭のようにしなって伸び、つま先を小刻みに震えるがごとく動かして、自由自在にボールをコントロールするのだ。一部の一流選手がこうした技能を身につけているなら驚かないが、それはどんな小さな田舎町でも、都市のスラムの路上でも、砂浜でも、密林の中に開かれたちっぽけな村でも見ることができる風景なのだ。ブラジルにおけるサッカーの広がりと、選手層の厚みをまざまざと痛感させられる。

 登場する10人の子供たちが、みんなプロのサッカー選手を目指しているわけではない。カポエイラ指導者への道を選ぶ少年もいれば、フットサルの世界で活躍する選手もいる。仕事のかたわら、ビーチバレーならぬフットバレーに情熱を傾ける少女もいる。事故で片足を失いながら松葉杖でサッカーを続け、パラリンピック出場を夢見る少年もいる。サッカーを中心に、フットサル、フットバレー、サンバ、カポエイラなどが、すべて「ジンガ」という言葉でつながっていく。サッカーはブラジル人にとって単なるスポーツではなく、身体に染みついた文化のようなものなのかもしれない。

 この映画をプロデュースしたのは、『シティ・オブ・ゴッド』のフェルナンド・メイレレス監督。製作はスポーツメーカーのナイキ。サッカー好きはもちろんのこと、サッカー選手を目指している子供たちや、ブラジル音楽が好きな人にとっては最高に面白い映画だと思う。

(原題:GINGA: The soul of brasillian football)

4月15日公開予定 渋谷Q-AX
配給:レントラックジャパン、キネティック、コムストック オーガニゼーション
宣伝:プチグラパブリッシング
2005年|1時間18分43秒|ブラジル|カラー|ビスタサイズ
関連ホームページ:http://www.ginga-cinema.jp/
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