ロンゲスト・ヤード

2006/02/17 SPE試写室
刑務所の囚人と看守が白熱のフットボール試合。
1974年の同名映画をリメイク。by K. Hattori

 1974年にロバート・アルドリッチが監督した同名映画を、アダム・サンドラー主演でリメイクしたアクション映画。刑務所に収監されたフットボールの元花形選手が、囚人チームを率いて看守たちのチームと対戦する物語。同じ話はサッカーに設定を変えて、2001年に『ミーン・マシーン』という映画にもなっている。個性あふれるメンバーによる寄せ集めのダメチームが練習を重ねる中でめきめき強くなっていくスポーツ映画のダイナミズムに、刑務所内での権力闘争や確執、看守による悪質な嫌がらせやイジメといった要素を組み合わせている。今回の映画にはオリジナル版に主演したバート・レイノルズが重要な脇役で出演し、最後の最後にオイシイところを持っていく。

 製作総指揮と主演がアダム・サンドラーで、監督は彼と『N.Y.式ハッピー・セラピー』や『50回目のファースト・キス』で組んでいるピーター・シーガル。オリジナル版とリメイク版の違いは、男臭いアクションドラマを得意とするアルドリッチ監督と、コメディ出身のシーガル監督の違いであり、フットボール選手から俳優に転じた生粋のアクション俳優レイノルズと、スタンダップコメディから俳優になったサンドラーの気質の違いだろう。映画は暴力や死といったハードな内容を含んでいるが、それよりも全体にまぶしてあるギャグで観客を楽しませようという趣向になっている。

 刑務所映画というのはかつて大量に作られたことがあるが、その内容が刑務所の実情を反映していたのはいつまでだったのだろうか。アメリカでは刑務所における囚人の待遇が改善し、少なくとも表面的には、かつての陰湿で暴力的なイメージから遠い場所に変貌しているように思える。(こうした刑務所の変化は、映画『ショーシャンクの空に』にも描かれていた。)刑務所は囚人にとって、とても安全なところになったのだ。映画やテレビなどのメディアを通して刑務所を知る人間の目には、とりあえずそう映っている。こうなると『ロンゲスト・ヤード』のような設定は、まるで時代後れのマンガになる。刑務所で看守チームと囚人チームが命懸けのフットボールだなんて、真面目に考えればまるで荒唐無稽のおとぎ話なのだ。

 だからこそこの映画は「時代後れのマンガ」的な設定を、そのものずばり「マンガ」として描くのだ。これはマンガ。これはコメディ。これはギャグ。軽いお楽しみとして、映画の上映時間中だけ楽しんでくだされば結構。それが今回の映画なのだろう。アダム・サンドラーも、クリス・ロックも、そしてバート・レイノルズも、マンガ的な設定を十分に楽しんで、その中で目一杯おちゃらけて見せる。ただしこうしたおちゃらけに対して、敵役の看守軍団はあくまでシリアスに強面を崩さない方がよかったようにも思う。看守側もちょっとふざけた役回りがひとり混じっているのだが、これは少し中途半端だったかもしれない。

(原題:The Longest Yard)

G.W.公開予定 新宿K's cinema、銀座シネパトス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンターテインメント
2005年|1時間54分|アメリカ|カラー|スコープサイズ|SDDS、SRD、SR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/movies/
ホームページ
ホームページへ