レジェンド・オブ・ゾロ

2005/12/07 松竹試写室
アントニオ・バンデラス主演の『ゾロ』に続編登場。
主人公の子煩悩パパぶりに苦笑。by K. Hattori

 1998年に製作された『マスク・オブ・ゾロ』のスタッフとキャストが再結集して作られた続編。監督のマーティン・キャンベル、撮影のフィル・メヒュー、音楽のジェームズ・ホーナーなどはそのままで、主演のアントニオ・バンデラスとキャサリン・ゼタ=ジョーンズも引き続き登場。しかし前作の脚本家が『パイレーツ・オブ・カリビアン』の続編に入ってしまったせいか、今回の脚本は『アイランド』のアレックス・カーツマンとロベルト・オーチーのコンビが担当することになった。映画の印象としては、エピソードがうまく束ねられないまま、勢いで駆け抜けたような感じ。つまらなくはないけれど、前作のピリッと引き締まった爽快感はない。

 映画は前作の10年ほど後の話だろうか。1850年にカリフォルニアがアメリカ31番目の州に編入されるところから始まる。僕などはこの時点で、なんだか嫌な映画だな〜と思ってしまった。映画の中ではカリフォルニアの合衆国編入こそが絶対の正義であり、それに反対する者は秩序を乱す悪党のような描かれ方をしている。ゾロはスペイン語を話すメキシコ人たちの民衆ヒーローだったはずなのに、なぜカリフォルニアの白人支配を支持するのかがよくわからない。そこにあるのは「アメリカ合衆国こそが絶対正しい!」という硬直化したイデオロギーではないだろうか。

 前作からの10年間に、アメリカ・メキシコ戦争(1846〜48年)におけるアメリカの勝利があり、金鉱発見とゴールドラッシュ(1849年)の人口増加があり、その結果としてカリフォルニアの合衆国編入となったのだ。ゴールドラッシュによって、わずか1年でカリフォルニアの人口は6倍以上に膨れ上がった。外部からの移住による急激な人口増加は、古くからの地元民と新住民の間に大きな軋轢を生んだに違いない。しかしこの映画ではそうしたことをまったく無視して、カリフォルニアが合衆国に編入されることですべての問題が解決すると言わんばかりだ。

 時あたかも中東のイラクでアメリカは武力行使によって政権を瓦解させ、その後に親米傀儡政府を作ろうと躍起になっている。これはアメリカがカリフォルニアに対して行ったこと、テキサスで行ったこと、後にはハワイで行ったことなどの繰り返しではないのか。『レジェンド・オブ・ゾロ』はアメリカによるカリフォルニア併合を正当化し称賛することで、現在イラクで行われていることも正当化するのだ。

 まあそうした非常に嫌な感じの映画なのだが、その嫌な感じを中和しようとしてか、今回の話は主人公夫婦の離婚と子供を巡るゴタゴタという非常にパーソナルな物語になっている。しかしこれはこれで非常に不快。ヒロインには子供がいるのに、なぜこんなことをするんだろうか? そもそもあの謎の男たちがたまたま偶然ゾロの正体を見なかったら、その時はいったいどうするつもりだったの?

(原題:The legend of Zorro)

2006年1月21日公開予定 丸の内ピカデリーほか全国松竹東急系
配給:松竹、ブエナ ビスタ インターナショナル(ジャパン)
2005年|2時間6分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル、SDDS
関連ホームページ:http://www.zorro-movie.com/
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