プルーフ・オブ・マイ・ライフ

2005/11/09 GAGA試写室
精神を病んだ天才数学者とその娘たちの物語。
グウィネス・パルトロウが好演。by K. Hattori

 『Queen Victoria 至上の愛』や『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン監督が、デイヴィッド・オーパーンの戯曲『プルーフ/証明』を映画化した作品。主演は舞台でも同じ役を演じていたグウィネス・パルトロウのほか、アンソニー・ホプキンス、ジェイク・ギレンホール、ホープ・デイヴィスなど。マッデン監督は舞台版も演出しているそうで、映画の序盤などは舞台劇の匂いがかなり強く漂う。物語のほとんどは主人公とその父親が暮らした家の中で進行し、場面変化に乏しいのも舞台劇の雰囲気が残る原因だろう。映画化する際にもう少し映画ならではの演出なり仕掛けがあるとよかったのだが、この映画にはそうした余地があまりないし、そもそもそうした努力をした形跡すらあまり感じられない。これは最初から舞台をそのままの形で映画化することが、企画の中心にあったのではないだろうか。

 誰もが天才と認める数学教授ロバートが死んだ。若くして世界の注目を浴びた教授だったが、晩年に精神を病み、その優秀な頭脳がかつての輝きを取り戻すことはなかった。だが大学で数学の講師をしているハルは、教授が死の数年前、わずかな期間ではあるが正気を取り戻していたことを知っていた。教授は生前に数多くのノートを残している。その中には、正気に返った教授の手による世紀の大発見が残されているかもしれない! 教授の娘キャサリンは、教授の遺品をあさるハルに1冊のノートを手渡す。はたしてそこに書かれていた「証明」は、驚くべき数学の大発見だったのだが……。

 邦題は『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』と少々長ったらしいのだが、原題の『Proof』には「証明」の他に「証拠」や「試験」という意味もあって、この映画はそのすべてをテーマの中に含んでいる。ノートの中から発見された数学の「証明」問題を中心として、多くの人たちの手でその「追試」が行われ、それが誰の手によるものかという「証拠」探しが行われる。これはこれでとても面白い。数学の世界というのはまったく僕にはよくわからないのだが、それでも謎解きのような面白さがないわけではない。しかし映画の中でより切実なテーマになっているのは、「はたして人間同士の関係性は“証明”できるのか?」という問題だろう。父親と娘、姉妹、男女などの間にある感情を、第三者に立証したり証明したりすることは可能なのだろうか。

 父親と妹をシカゴに残したまま、ニューヨークで快適な暮らしをしている姉クレアと、父親を最後まで看取った妹キャサリンの関係が、映画の中の人間的葛藤の中心になっている。病んだ父を妹に押しつけていたという自分自身の負い目を挽回するかのように、妹を無理やりニューヨークに連れて行こうとするクレア。彼女もまたそうすることで、自分自身の何かを「証明」しようとしているのだ。似たような証明の罠に、人はしばしば捕らえられる。

(原題:Proof)

1月14日公開予定 みゆき座ほか全国東宝洋画系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 宣伝:ギャガ宣伝【秋】、アルシネテラン
2005年|1時間43分|アメリカ|カラー|シネスコ|DOLBY DIGITAL
関連ホームページ:http://c.gyao.jp/movie/proofofmylife/
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