僕の恋、彼の秘密

2005/11/08 松竹試写室
台北を舞台にした男の子同士のラブストーリー。
やおい系コミックの実写版みたい。by K. Hattori

 故郷の田舎町を離れて、大都会・台北にやってきた17歳のティエン。友だちの家に居候しながらアルバイト生活をする彼が待つのは、本物の恋との出会いだ。ある日彼は、プレイボーイと噂されるバイと知り合い親しくなる。彼が運命の恋人なのか? 惹かれあうふたりは、ついにベッドを共にするのだが……。

 登場人物が男ばかりで、しかも全員が同性愛というラブコメディ。ゲイムービーには違いないが、ここでは同性愛が異性愛と相対化されることなく、それのみで絶対的な位置を占めている。しかも映画の中で、それについては何の言い訳も断りもない。だからといって、映画の中に女性が登場しないわけではないし、異性愛が存在しないわけでもなさそうだ。(劇中には「ゲイ」という言葉が出てくるので、当然それ以外の人たちもいるということだろう。)なんだか不思議な世界観ではあるけれど、こういうのは昔の少女漫画や「やおい系コミック」にありそうな世界かもしれない。

 お話はきわめて単純。恋を夢見る純情可憐な少年が、名うてのプレイボーイと恋に落ちる。少年はこの恋のために大人ぶった背伸びをする。しかし彼に捨てられて深く傷つく。だがプレイボーイ青年もじつは少年に本当の恋をしていて、最後はふたりが結ばれハッピーエンド……。要するに『昼下がりの情事』みたいな話なのだ。使い古された恋愛映画のパターンを、性懲りもなくなぞってみせているだけのこと。しかし映画の作り手はもちろんそんなこと百も承知だから、この映画ではこうした恋愛映画の定石をパロディにしてみせる。プレイボーイ青年が精神分析に通って奇妙な治療を受ける場面は傑作だし、彼の心の傷を親友が解説してみせる劇中劇にも笑ってしまう。

 映画全体のトーンとしては、どのエピソードも感情表現やリアクションなどが誇張されたコミカルムード。しかしそんな映画の中でただひとり、プレイボーイ青年バイ役のダンカン・チョウだけが重たいムード。感情表現がはじけず、彼の登場シーンだけはテンポが停滞するのだ。しかしこの役はむしろ、これでよかったのかもしれない。この役まで他のキャラクターと同じノリだと、映画が軽くなりすぎてしまう。自他ともに認めるモテモテのイケメン男なのに、どこかしら周囲に馴染めずにいるバイの作り笑顔めいた表情が、この物語を使い古された定番のラブコメディから、現代の若者たちの偽らざる恋愛模様を描いたドラマに結びつけているのだ。

 主人公ティエンとバイの物語が完全に型にはまっているのに比べると、ルームメイトのユーを巡るエピソードも「ありがちな話」ながら自由闊達で伸び伸びしたものになっている。映画が重くなりそうになると、ユーを筆頭に感情表現過多な友人たちが映画を引っかき回していくのだ。こうした周辺のアンサンブルは、ちょっと風変わりな男同士の友情物語でもある。

(原題:FORMULA 17/17歳的天空)

12月3日公開予定 新宿武蔵野館ほか全国順次
配給・宣伝:アートポート
2004年|1時間33分|台湾|カラー|ヴィスタ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.bokukare.jp/
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