プライドと偏見

2005/11/07 よみうりホール
オースティンの代表作「自負と偏見」の映画化。
現代にも通じるラブコメディ。by K. Hattori

 ジェーン・オースティンの代表作「自負と偏見(高慢と偏見)」を、キーラ・ナイトレイ主演で映画化した18世紀版ラブ・コメディ。オースティンの原作は、映画でも大ヒットした『ブリジット・ジョーンズの日記』の下敷きにもなった古典中の古典だ。(原作そのものより、それをBBCでドラマ化したものの影響が強いのかも。)鼻っ柱が強くて自分の生き方を曲げようとしない若い女性と、気位が高くてなかなか他人と打ち解けることができない男性が、互いに惹かれ合いながらもなかなか自分の気持ちに素直になれない様子を、恋や結婚にまつわるいくつかのエピソードを織りまぜながら描いていく。

 ヒロインのエリザベスは21世紀の我々にも共感できるキャラクターなのだが、彼女をとりまく社会環境は今とはまったく違うものだ。特に女性の社会的な地位は、今となってはなぜそんな境遇で女性たちが生きて行けたのかさえ不思議なほど低い。たとえ貴族の家に生まれたとしても、女性は親の遺産を相続することができない。結婚して妻になること以外に、女性が安定した生活を手に入れることはできないのだ。(女性の職業はまだごく限られているのだ。)エリザベスの生まれたベネット家は少しばかりの地所があるとはいえ、両親の他は女ばかり5人姉妹という家族構成。両親、特に母親の切なる願いは、娘たちが無事に嫁いでくれることだ。相手は誰でもいい。できればお金持ちなら最高だ!

 こうした「まず結婚ありき」という価値観を、ペネット家の娘たちは誰もが共有していて、それ自体には何も疑問を持っていない。しかしそれでもなお、若い男女は「恋」をするのだ。エリザベスは「愛のない結婚をするつもりはない」ときっぱり言い放つことができる、当時としては型破りな女性。もっともそんな彼女の強気な態度も、18歳という彼女の年齢ゆえであることも、映画の中ではきちんと描かれている。彼女の親友は27歳という「高齢」になって「老後の不安」にかられ、愛してもいない男と結婚することを決めるのだ。ただしそうした「愛なき結婚」が不幸なものかというと、必ずしもそんなことはないのだけれど……。

 映画は「結婚だ〜!」と叫び回るベネット家の女たちの姿を最初に登場させて、18世紀の女性たちが暮らしていた異質の価値観の中に、観客を半ば強引に放り込んでしまう。しかしその後の華やかなダンスパーティーの場面で、観客はその時代の人々にも間違いなく幸せがあり、楽しみがあり、日々の暮らしの中で伸び伸びと暮らしていることを知るのだ。そしてそこには、現代と変わらぬ人々の姿がある。喜怒哀楽の基本原理は、どんな時代のどんな社会でも同じようなものなのだ。

 意地の張り合いやすれ違いなど、恋愛コメディとしての定石は18世紀も現代も変わらない。むしろ時代背景による「かせ」が多い分、各エピソードの輝きは増している。

(原題:Pride & Prejudice)

1月14日公開予定 有楽座ほか全国ロードショー
配給:UIP
2005年|2時間7分|イギリス|カラーDTS、SRD、SR
関連ホームページ:http://www.pride-h.jp/
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