ハリー・ポッターと炎のゴブレット

2005/11/04 ワーナー試写室
最初から最後まで見せ場満載のスペクタクルショー。
エンドクレジットだけで10分以上!by K. Hattori

 人気シリーズの第4弾。主演のダニエル・ラドクリフなど主要キャストはこれまで通りだが、監督として『フォー・ウェディング』のマイク・ニューウェルが新たに参加している。原作はシリーズを重ねるごとにどんどんボリュームアップしているのに、映画はどれも2時間半程度の上映時間でキープするというのは大したもの。しかし今回の映画では、そろそろその無理が出てきたような気がしてならない。ホグワーツ魔法魔術学校での1年間を描くにあたり、エピソードはどれも短くて食い足りず、しかもエピソードごとのつながりが希薄なのだ。大げさな言い方をするなら、映画全体はもはやバラバラに分解する寸前といった様子ですらある。それをなんとか1本の映画にまとめているのは、もはや脚本の構成ではない。今回の映画では最初から最後まで続く極端に暗く寒々しい画面設計が、映画全体にひとつのトーンを生み出しているのだ。

 それにしても、なんと暗い映画だろうか。画面が暗いというのもあるが、内容もひどく暗い。映画は冒頭でいきなり、ひとりの人間が死ぬところから始まる。そして映画のクライマックスでは、映画の主要登場人物のひとりが死ぬ。そもそもこのシリーズは最初から、巻が進むに従ってどんどん暗くなると原作者自ら宣言していたから、観る側にもそれなりの覚悟がなかったわけじゃない。でも3作目までは「これから大変だぞ〜」という警告だけで観客を震え上がらせていたものが、今回いきなり「大変」な実体がやってきたようだ。

 映画の暗さを生み出す最大の理由は、今回の物語が魔王ヴォルデモート卿の復活を描いているからだ。これまでさんざん言及され、間接的に闇の力を行使してポッターを苦しめていたヴォルデモートが、ついにその姿をあらわにする。演じているのはスピルバーグのアカデミー賞受賞作で悪役を演じて注目され、最近は有名なサイコスリラー・シリーズで、題名にもなった連続殺人鬼を演じた有名俳優。『ハリー・ポッター』シリーズは、本当に俳優陣が豪華だな〜と痛感させられる配役だ。今回ヴォルデモート卿の登場はごく短いものだったので、おそらくは次回以降本格化するであろうハリーとの対決が楽しみ。(僕は原作を第1巻しか読んでいないので、先のことはまったく知りません。)

 このシリーズ全体に言えることなのだが、この映画も1本の独立した映画作品としては構成に未整理な部分が目立つ。各エピソードやキャラクターは、もっとすっきり整理統合できるはずなのだ。しかし原作がまだ完結していないため、映画製作者たちはエピソードやキャラクターを勝手に削除できない。未だ作者の頭の中にしかない原作の未刊行部分で、それまで目立たなかった人物が突如として活躍し始めないとも限らないからだ。物語がすべて完結していた『ロード・オブ・ザ・リング』三部作に比べると、こちらはいろいろと制約が多いのだ。

(原題:Harry Potter and the Goblet of Fire)

11月26日公開予定 丸の内ピカデリー1、渋谷東急ほか全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2005年|2時間37分|アメリカ|カラー|シネマスコープ|SRD、DTS、SDDS
関連ホームページ:http://www.gobletoffire.jp/
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