仮面ライダー THE FIRST

2005/10/07 東映第1試写室
「仮面ライダー」1号&2号を現代風にリメイク。
脚本をもっと工夫してほしかった。by K. Hattori

 映画『X-メン』を観たとき、僕はすぐに「仮面ライダー」を連想した。そして古いアメコミ・ヒーローが最新技術でリメイクされているのと同じように、「仮面ライダー」も最新技術でリメイクすべきだろうと考えた。しかし世の中には、似たようなことを考える人が必ずいるものだ。この映画は「仮面ライダー」1号と2号の活躍を、現代風にリメイクした劇場映画。仮面ライダーのコスチュームは往年のライダーそのままのイメージで細部をブラッシュアップし、ショッカーの怪人たちもシャープなデザインに進化している。デザイン(キャラクターリファインデザインと表記されている)担当は出渕裕。これはカッコイイ。これのデザインを観ただけで、「仮面ライダー」世代である僕は興奮してしまう。

 しかし、映画はまったくダメだった。何より失望させられたのは、今回の仮面ライダーが「変身」しないことだ。仮面ライダーのコスチュームは戦闘スーツであり、仮面は正体を隠すためのマスクに過ぎない。これは他の怪人たちも同じだ。この『仮面ライダー THE FIRST』という映画では、特殊能力を身に付けた「改造人間」たちが戦うのではなく、大人たちが奇妙な扮装のコスプレ大会を演じているだけなのだ。ライダーのマスクはあごの部分がパチンと外れて口が出るのだが、その姿は仮面ライダーではなくライダーマンに近いと言える。ああ、ライダーマン!

 「仮面ライダー」が一世を風靡した時代には、どこの空き地でも道路でも、子どもたちが「ヘ・ン・シン!」とポーズを決めていたものだし、1号と2号の変身ポーズのどちらがかっこいいかが熱く議論されていたものだ。(議論しているのは小学校低学年だけどね。)そしてライダーベルト! サイクロン号! これが子どもたちには憧れの的だった。僕はライダーベルト(もちろんオモチャ)を買ってもらって、その夜は枕元に置いて寝たぞ。それもこれも、すべては変身のためだった。変身しない仮面ライダーなんて……。(ちなみに空き地で繰り広げられる「仮面ライダーごっこ」において、ライダーマンはショッカーの怪人以上に人気のないキャラクターだったことを言い添えておきたい。)

 脚本もかなりデタラメというか、あまりにも出来がヨロシクない。仮面ライダーの話とはまったく関係ない話が交互に進行し、最後に合流するという構成が悪いとは思わないが、ふたつの物語が関係なさ過ぎる。物語の世界に、警察という存在がまったくないのも不自然。主人公はヒロインの婚約者を殺した容疑者になっているのに、なぜなんの取調べも受けずに普通に暮らしているのだろう。殺人事件の容疑者がまったく何のおとがめもなしに大手を振って世の中を渡って行けるのだから、これはショッカー云々以前に無法地帯だぞ。仮面ライダーはかっこよくても、話がまるでダメでは意味がない。「変身!」も含めてもう少し工夫がほしかった。

11月5日公開予定 渋谷TOEI(1)ほか全国ロードショー
配給:東映ビデオ
2005年|1時間30分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.maskedrider1st.jp/
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