ファンタスティック・フォー

超能力ユニット

2005/10/05 錦糸町シネマ8楽天地
ジェシカ・アルバの見えざるストリップにはドキドキ!
でも映画としてはイマイチなのだ……。by K. Hattori

 実験中に強力な宇宙線を浴びて超能力を身に付けた科学者たちが、同じ宇宙線を浴びてモンスターになった男と戦うSFアクション・アドベンチャー映画。原作は『スパイダーマン』や『X-メン』と同じスタン・リー。監督は『TAXI NY』のティム・ストーリー。主人公たちが超能力を身に付けるまでがとても素早い展開で、各キャラクターの人間関係などもテキパキ紹介してしまう段取りの良さに感心する。しかしこの映画、すべてがそのテキパキした段取りの中で進行してしまい、いつまでたっても本格的なドラマが生まれないまま終わってしまった印象だ。全体にとても軽い。軽すぎて物足りない。

 結局この映画は、何を観客に見せたかったのだろうか? そのポイントが、この映画を観ていてもよくわからないのだ。映画のあちこちに小さな見せ場はある。しかしそれを観ていても、ちっともハラハラドキドキできない。すべては段取りなのだ。本当の大きなクライマックスやスペクタクルの前に、どんな映画も用意している段取り芝居の気配。その段取りが付けば、次には本格的にスゴイ何かが観られるに違いないとこちらが身構えていても、この映画はそれを見せないままクライマックスを駆け抜けてしまう。いったいこれは何だろうか。

 映画の観客は、火事場見物の野次馬みたいなものだ。遠くで消防車のサイレンが聞こえる。火事見物のためにあわてて家を飛び出していく。火事場の現場らしきものが、どんどん近づいてくる。火元は近い。煙のにおいもする……。火事場まで駆け付けるスピードにおいて、この『ファンタスティック・フォー』という映画は素晴らしい働きをしている。まっしぐらに火事場に近づき、煙が吹き出し、炎がめらめらと燃える現場まで一直線だ。ところが、この映画はその現場を同じ速度で通りすぎてしまうのだ。立ち止まってゆっくり見せてくれない。すぐにまた、次の現場に向ってすっ飛んでいく。これはなんだかすごく、欲求不満な気持ちにさせられてしまうのだ。

 なぜこうなってしまうのか、僕にはよくわからない。脚本が問題だったのかもしれないが、それよりも僕は、この手の映画で製作作業が分業化されてしまった弊害のようにも思う。役者の芝居とデジタル作業で作られるスペクタクルが、うまく融合できていないのではないだろうか。事前に作られた設計図にもとづいて、監督は役者の芝居を撮影し、特殊効果やCGのスタッフは決められたシーンを作る。そのふたつの作業が、チグハグなのかもしれない。

 これはデジタル技術の使い方を知り尽くしているジョージ・ルーカスが作った、『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』と比べれば一目瞭然だろう。『スター・ウォーズ』は壮大で華麗な絵作りの部分と、ダークでグロテスクな絵作りの部分をちゃんとCGで作り分けている。その点でこの映画はどれも、絵がキレイキレイすぎる。

(原題:Fantastic four)

9月17日公開 日劇3ほか全国東宝洋画系
配給:20世紀フォックス
2005年|1時間46分|アメリカ、ドイツ|カラー|シネマスコープ|DTS、Dolby Digital、SDDS
関連ホームページ:http://www.foxjapan.com/movies/f4/
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