ドルフィン・グライド

2005/07/13 メディアボックス試写室
イルカの視点で海の中をぐんぐん泳ぎまくる!
波を水中から観る映像は新鮮。by K. Hattori

 サーフィン映画の古典『エンドレス・サマー』や『ビッグ・ウェンズデー』のカメラマンとして、水中撮影に革命を起こしたジョージ・グリノーの監督最新作。この映画のコンセプトは、観ている人を「イルカの世界」に連れて行くこと。普段人間が水面上から見ている波を、水中から見つめる映像は新鮮だ。上映時間は21分。ドラマやストーリーがあるわけではなく、ただ音楽と映像だけが続く至福のひととき。グリノー監督はこの映画のために、撮影装置やボートを自作することから始め、なんと10年近い歳月をかけて映画を完成させたのだという。

 この映画を観ると、我々が日頃何気なく見ている出来事が、その裏側にまったく別のものを隠しているという単純な事実を再発見することができる。水中から見た波は、太陽の光を反射しながらゆっくりと空中に吸い込まれていく。その幻想的な美しさ! 水中カメラが泳ぎ回るイルカとまったく同じ速度で水中を進み、しかもイルカと戯れるように自由に動くのもびっくり。いったいこれは、どうやって撮影してるんだ?

 映画には26分のメイキングが付いていて、グリノー監督が開発した数々の撮影テクニックや、最新の撮影機材が紹介されている。水中撮影用のカメラやハウジングを自作し、撮影用のボートまで作ってしまうグリノー監督。水中撮影用に作ったカメラを、実際には陸上でしか使わなかったという意外なエピソードも紹介される。『エンドレス・サマー』でサーフィン映像を刷新した時のエピソードなど、古い映像も紹介されている。編集がデジタル化したもののマニュアルがまったく使い物にならず、やりたいことがあれば詳しい人にその都度教えてもらうという話も面白かった。まあ現場なんてそんなもんだよな……。

 橋の上から流れる水をずっと眺めていると、本来静止しているはずの自分が、逆にすごいスピードで流されているような錯覚に陥ることがある。『ドルフィン・グライド』もそれと同じような効果を持つ映画だ。映画のスクリーンを見つめながら、観客は自分自身が座って画面を観ているのではなく、猛スピードで水中を突き進んでいるような錯覚に何度も陥ることだろう。

 自分の知らなかったまったく未知の世界を体感させてくれるという意味で、この21分の映画は2時間を超える長編映画にまったく引けをとらない。初体験の映像のショックという意味でなら、僕はここ何年かに観てきたどんな映画よりインパクトを味わうことができた。一度見たら二度と忘れられない、貴重な映像体験だ。F1の車載カメラの映像などと同じ、一種のライド映像ではあるのだが、日常生活の延長では想像すらできない映像がそこにはある。

 問題は映像が気持ちよすぎてつい眠気を誘われてしまうということか……。僕は途中で何度が意識が遠のくのを感じました。でもそれがまた、気持ちいいのです!

(原題:Dolphin Glide)

8月6日公開予定 テアトルタイムズスクエア(レイト)
配給:グラッシィ 宣伝:クレストインターナショナル
2005年|21分(メイキング26分)|オーストラリア|カラー|ビスタサイズ|SRD
関連ホームページ:http://www.glassymovie.jp/dolphin.htm
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