日本で大ヒットした『リング』をほぼ忠実にハリウッドで再映画化した『ザ・リング』は、続編製作で『リング』の中田秀夫監督を招き、鈴木光司の原作「らせん」とも、日本で作られた『リング2』とも異なるオリジナル・ストーリーの映画を作ると伝えられていた。しかし出来上がった映画には、とてもオリジナルとは思えない既視感がある。何のことはない、これは鈴木光司の原作を中田監督が映画化した『仄暗い水の底から』を、『ザ・リング』の世界に移植した翻案作品なのだ。
水の中で死んだ少女の亡霊が、母親を求めて同じ年頃の子供を持つシングル・マザーにつきまとう。自分の子供を守るため、母親は少女の亡霊に立ち向かう。『仄暗い水の底から』は主人公母子の引っ越しから始まる物語だが、この『ザ・リング2』も主人公母子は引っ越して新しい環境に移っている。母親が周囲から「母親失格」の烙印を押されそうになるという展開も同じだ。
『仄暗い水の底から』はジェニファー・コネリー主演で『ダーク・ウォーター』という映画にリメイクされたのだが、その正規リメイク版が公開される前に、オリジナル版を撮った監督にセルフ・リメイクに近い形の映画を撮らせて、さっさと公開してしまうハリウッドの図々しさ! いやはやアメリカの映画界というのは、まさに生き馬の目を抜く世界ですな〜。でもこうなると、ウォルター・サレス監督の『ダーク・ウォーター』も早く観たい気持ちになる。中田秀夫監督もウォルター・サレス監督もハリウッドの外国人監督という共通点があるしね。
さて中田監督のハリウッド・デビュー作でもある『ザ・リング2』だが、もともと完成度の高かった映画を手直しすればよかった前作と違って、今回は話の土俵を新しく作らなければならない。今回も「呪いのビデオ」を再登場させて前作とのつながりを作ろうとしているのだが、このビデオがどこから現れたのかわからないなど、辻褄の合わないところもある。前作では誰彼かまわずビデオを見た人間を呪い殺していたサマラが、母の愛を求める孤独な怨霊に変身してしまったのにはガッカリ。前作ではヒロインと息子が「呪い殺される対象」になる恐怖だったが、今回はどちらも「呪いの対象」から除外されてしまうのだ。主人公たちに明確な殺意を抱くのは、結局森にいた鹿たちだけではないの?
映画で一番面白かったのは、サマラの実母としてシシー・スペイセクが出演していたこと。スペイセク主演の『キャリー』もまた、母に愛されない呪われた少女の物語だった。まるでキャリーからサマラへと呪いの遺伝子が継承されたように見えるのは、この配役を決定した側の狙いだろう。スペイセクの登場シーン以降、この映画は『仄暗い水の底から』のセルフ・リメイクを脱し、『キャリー』の呪われた後日談のような映画になっている。
(原題:The Ring Two)
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