ワースト・コンタクト

2005/06/17 メディアボックス試写室
哀川翔扮するヤクザが宇宙人と“再会”する話。
つまらない。しかし何かが気になる。by K. Hattori

 「つまらない!」と切り捨ててしまうのは簡単だが、歯に挟まった食べカスのように、違和感と奇妙な後味を長く残す映画というものがある。『ワースト・コンタクト』はまさにそんな映画だ。単に下手くそだとか、単に出来が悪いというのとは違う。もちろん下手くそで出来が悪いのも確かだが、それだけでこの映画の「つまらなさ」は説明できないような気がするのだ。作り手の思惑や狙いが、どこかでボタンを掛け違えているおかしさ。しかしちょっと観たところでは、その掛け違いがどこで生じているのかさっぱりわからない。

 哀川翔扮する生垣幸太郎というヤクザが親分に頼まれて大事なブツを取引現場に運ぶ途中、小さな男の子を誘拐しようとするホームレス風の男を見つける。男の子を救おうとした幸太郎は、ホームレス風の男が「コータローくん」を探していると知ってビックリ。じつは今から20年前、幸太郎は宇宙人だと名乗る川田(カーダ)という男を助けたことがある。川田は20年ぶりに、その時のお礼をしようと幸太郎を訪ねてきたのだ……。

 映画の中にはじつにいろいろな要素がぶち込まれている。20年ぶりに地球を訪れた宇宙人。日本のヤクザ組織と中国マフィアの対立。幸太郎を捕らえて出世の道具にしようと、でっち上げ捜査さえいとわない刑事たち。何かと親分に目をかけられている幸太郎を妬み、足を引っ張ろうとする兄貴分。幸太郎と親分の二股を掛けている幸太郎の愛人と、突然現れた幸太郎に慌てふためき、素っ裸でベランダに追い出される親分。女房に出て行かれて離婚寸前になっている、幸太郎の幼なじみの警察官。幸太郎の向かいの部屋に住む認知症の老婆。警官とコネのある中国人の殺し屋。他にも細々としたネタがゴチャゴチャと。

 この映画がしていることは、ジャンルムービーからの逃走だ。映画は観客に向かって、まずジャンルムービーとしての記号をこれでもかと見せつける。まずこれはヤクザ映画である。しかし我修院達也扮する運転手の登場がそれを否定し、宇宙人が出てきてSFになる。ところがこの宇宙人がまったく宇宙人らしさを見せず、映画はでっち上げ捜査に燃える警察官の話に移行していく。しかしこれもまた、別の話へと押し流されていく。

 子供がおもちゃ箱の中から次々におもちゃを取り出すように、この映画も次々にあの手この手のアイデアを取り出してくる。でもそれはチラリと眺めただけで、あっと言う間に捨てられてしまうのだ。新しいアイデアは次々出てくる、でもそれらを捨てて捨てて、最後までついに何も手に残らなかったというのがこの映画ではないだろうか。アイデアのいくつかを、せめてもう少し膨らませれば、もう少し面白くなったことは間違いないだろうに。

 しかしこの映画、そもそもが普通の「面白さ」からも逃走しているような気さえする。エンディングに流れる「やつらの足音のバラード」が象徴的。

8月6日公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:ファインフィルムズ 宣伝・配給協力:アニープラネット
2005年|1時間33分|日本|カラー|ヴィスタ
関連ホームページ:http://www.finefilms.co.jp/
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