恋する神父

2005/06/02 メディアボックス試写室
カトリックの神学生が若い女性に恋をしてしまうが……。
映画はまずまず。字幕がちょっとヘン。by K. Hattori

 神父を主人公にした映画は『我が道を往く』や『僕たちのアナ・バナナ』などがすぐに思い浮かぶが、この映画は神学生を主人公にしている珍しい韓国映画だ。韓国はキリスト教徒が多いことで有名だが、そのほとんどはプロテスタント。同じキリスト教でもプロテスタント信者はカトリックのことをほとんど知らないのが常だから、この映画に描かれるさまざまなカトリックの習慣やしきたりが、いちいち物珍しく見えるのではないだろうか。

 終生独身を貫くカトリックの聖職者を目指す学生が、恋をして進路に悩むという話は正直言って陳腐だ。主人公の真面目な神学生と奔放なヒロインがお似合いのカップルにも見えず、その時は一時的に付き合ってもいずれ別れてしまいそうな気がするな〜、というのが偽らざる僕の感想だ。この映画が神学生の信仰心と恋の葛藤を描くものだとすれば、信仰も恋も中途半端にしか描けていない生ぬるい映画だと思う。

 しかしこの映画は、これで十分に面白いものになっている。それは自らもカトリック信者だというホ・インム監督が、カトリックの神学生という特殊なキャラクターをリアルに描写している点にある。脚本も書いているホ監督は何人もの神学生にインタビュー取材し、その生活ぶりや考え方を徹底的に調べた上で、それをラブコメディという一般向けの器に盛り付けてみせたのだ。最後の盛り付け方にいささか紋切り型でご都合主義の点は見えるが、素材の生きのよさは天下一品。特に映画のクライマックスにある聖職への叙階式の様子などは、カトリックと縁のない人には滅多に見ることのできない場面だろう。

 映画には大勢の神学生が登場するが、大きく扱われているのはクォン・サンウが演じる主人公キム・ジュシクと、キム・イングォンが演じているソンダルだ。ジュシクは生真面目な優等生タイプで、ソンダルは軽薄で夜遊び好きの不良神学生。神学校のミサで大失敗をやらかしたふたりが、田舎の小さな教会に研修修行に出されてしまい、そこでいろいろありまして……というお話。このふたりの対比はいささか誇張されているものの、共に神学生や聖職者の典型的なタイプなのかもしれない。一方はいかにも真面目な優等生タイプだが、世俗の事情に疎くて融通が利かない。もう一方はいい加減な性格なようで、そのじつ細やかな人情に通じているのはこちらなのです。

 主人公が聖職者への道を選ぶか、それとも自分の恋を選ぶかという葛藤の結論は、映画中盤にある神学校の先輩のエピソードなどもあってあらかじめ予測がつくもの。しかしその結果を導くキーワードとして、「デオ・グラシアス」というラテン語を使うあたりは上手い脚本。ラブストーリーとしては弱いんだけどね〜。

 監督や出演者たちはカトリック教会や神学校を入念にリサーチしたそうだが、日本語字幕にもその何分の1かの努力が欲しかった。用語の訳がちょっと変だぞ。

(英題:Love, So Divine)

7月中旬公開予定 新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか
配給:東芝エンタテインメント 宣伝:スキップ
2004年|1時間48分|韓国|カラー|ヴィスタ1:1.85|SRD
関連ホームページ:http://www.love-shinpu.com/
DVD SpecialShop DiscStation 7dream_88_31 TSUTAYA online
ホームページ
ホームページへ