交渉人 真下正義

2005/05/11 錦糸町シネマ8楽天地(シネマ1)
『踊る大捜査線』シリーズの番外編は結構本気の作り込み。
こっちはこっちでシリーズ化希望。by K. Hattori

 『踊る大捜査線』シリーズの番外編として、本家『踊る大捜査線』と同じスタッフ&キャストで作られたサスペンス・アクション映画。『踊る〜』の映画版は導入部がコメディタッチだったが、こちらはかなりの本格派。主人公の真下は『踊る〜』シリーズそのままのなので、そこかしこで観客の笑いを取る場面もある。しかしこれがピンと張りつめた緊張感を適度に弛緩する役目を果たし、映画全体のいいアクセントになっていると思う。

 地下鉄の管制システムが乗っ取られ、遠隔操作された試験車両が路線内を自由自在に動き回るというアイデアと、爆弾テロという組み合わせだが、これは設定にすこし回りくどさを感じた。試験車のクモは犯人の自由に都内のどこにでも移動できるのだから、ここは素直に「都内の地下を巨大な爆弾が移動する」という話にした方がサスペンスは盛り上がったのではないだろうか。犯人の目的も動機も最後までわからないことは、犯人像をある種の幽霊にしてしまうことで乗り切れていると思う。でも犯罪映画としての筋立ては、あまり紆余曲折してしまうとかえってサスペンスもミステリーも薄っぺらなものになっていくような気がする。話を追いかけることのみに目が行ってしまい、周囲の肉付けが疎かになってしまうのではないだろうか。

 まあこうした弱点を差し引いても、この映画は面白いと思う。映画としての完成度を問われれば、上記の点も含めて欠点や弱点は数々ある。あまりにも豪華なキャストがうっとうしいと思うこともしばしばだ。しかしそれでもいい。これは映画製作の現場まで含めて、巨大なイベントを仕立てているのだ。イベントは参加者の顔ぶりがにぎやかな方が面白い。映画の作り手が仕組んだイベントに、製作現場が大乗り気になり、豪華な配役が実現し、映画完成後はそこに観客も参加していく。そのイベント性に気づかない人は、この映画を楽しめないに違いない。これは『踊る大捜査線』シリーズのスタッフとファンが一緒に作るお祭りなのだ。

 このビッグ・イベントのために、今回新たに『踊る大捜査線』の世界に加わった人たちも多い。寺島進が演じた強面の木島刑事も、いい味出している。真下と木島コンビの掛け合いはこの映画の見どころのひとつで、今後同じようにシリーズが作られていくのなら、ぜひとも木島には再登場願いたいと思う。

 いつもいろいろな映画のタイトルを散りばめて映画ファンをニヤニヤさせる映画版『踊る〜』シリーズだが、今回はその数がシリーズ中最多になっている。その手の映画が好きな人には嬉しいかもしれない。

 ところで不思議なのは、クリスマス時期が背景になっている映画を初夏に公開するというタイミングの問題だ。これは夏ごろにはDVD発売して、年末にはテレビ放送してしまうということなのかな〜。劇中の謎解きより、そちらの方が興味深い。『容疑者室井慎次』にも期待!

5月7日公開予定 日劇2ほか全国東宝系
配給:東宝
2005年|2時間7分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.odoru-legend.com/
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