エターナル・サンシャイン

2005/3/8 GAGA試写室(赤)
失恋の苦しさと悲しみをリアルに描くジム・キャリー主演作。
この気持ちは誰にでも心当たりがあるはず。by K. Hattori

 恋人と別れて一人暮らしをしているジョエル・バリッシュは、2月初旬のその朝をひどい二日酔いで迎えた。どうしようもない倦怠感に生まれて初めて会社をずる休みしたジョエルは、ほんの気まぐれで季節外れの海辺を訪れ、そこでひとりの女性に出会った。彼女の名はクレメンタイン。ジョエルは彼女の積極的なアプローチにたじたじになりながらも、なぜか彼女と一緒にいることに心地よさを感じていた。ところが……。

 『ヒューマンネイチュア』のミシェル・ゴンドリー監督と脚本家チャーリー・カウフマンのコンビによる最新作は、失恋の痛みと、恋の思い出と、愛についての物語だ。冬の海辺で偶然出会った主人公たちが、その翌年には早々に別れてしまい……という話かと思ったら、なぜか映画冒頭に描かれているエピソードと、劇中で語られているエピソードに食い違いが出てくる。ふたりが最初に出会ったのは、友人のパーティでだったって? 冬の海岸はどこに行っちゃったの? その種明かしは後々のお楽しみ。

 それはさておき、ジョエルと別れたクレメンタインは、彼との関係をきれいさっぱり忘れるために、記憶除去治療を専門とするラクーナ医院でジョエルの記憶をすべて消し去ってしまう。それを知ったジョエルは大ショック。自分はまだ彼女とやり直そうと思っていたのに、彼女は自分自身の人生から自分の存在を抹消してしまったのだ。ジョエルは薄情なクレメンタインを自分の人生から消し去るべく、ラクーナ医院で記憶除去治療を受けることにする。だが治療の過程で自分の記憶の中を覗き込んだジョエルは、自分がいかにクレメンタインを愛していたかを思い知る。次々に消されていく彼女との思い出。このままでは彼女自身も、思い出の中から消えてしまう。ジョエルはそれに必死で抵抗するのだ。

 手ひどい失恋を経験したことのある人なら、この映画に描かれた主人公の葛藤にすぐ思い当たるところがあると思う。別れた相手のことを忘れて新しい人生をスタートさせたいと願う気持ちと、過去の美しい思い出を失いたくないという気持ち。「あの時ああしていれば」「こんなことを言うのではなかった」という後悔の念がふくらみ、楽しかったことばかりが思い出されてしまう。失恋による心の痛みと苦しみを、これほど詳細に描いた映画は他にあまりないのではないだろうか。

 映画に出てくる記憶除去術など使わずとも、別れた恋人との美しい思い出は、時間が経てばやがて色あせて少しずつ思い出せなくなっていくものだ。でも失恋の痛みが完全に消えたとき、恋をしていた時の甘美な思い出も失われている。僕はこの映画を観ながら、遠い昔に別れて、今は記憶の中で小さなしこりのようになっている恋人が何人かいることを思い出した。既に名前どころか、顔さえ思い出せない女性たち。そんなわけで、僕がこの映画の中で一番感情移入したのはキルスティン・ダンストなのだ!

(原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind)

3月19日公開予定 丸の内ピカデリー2ほか全国松竹東急系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2004年|1時間47分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|DTS、ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://www.eternalsunshine.jp/
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