Shall we Dance?

シャル・ウィ・ダンス?

2005/2/21 GAGA試写室
周防正行の大ヒット映画をリチャード・ギア主演で再映画化。
物語はオリジナルのままですが……。by K. Hattori

 周防正行の『Shall we ダンス?』をアメリカでリメイクした作品。筋立てはオリジナル版とほぼ同じだが、もともと2時間16分の映画を30分も縮めて1時間46分に仕上げた。当然あちこちのエピソードを短くつまんでいるわけで、このあたりがハリウッド流と言えばハリウッド流か。主演はリチャード・ギアとジェニファー・ロペス。監督は『マイ・フレンド・メモリー』や『セレンディピティ』のピーター・チェルソム。

 オリジナルとの最大の違いは、主人公が郊外に家を持つ中堅サラリーマンから遺言専門の弁護士に変更されたことと、妻がパート勤めの専業主婦からデパートで売り場担当の管理職として働くキャリア女性になったこと。明らかに主人公の生活ステイタスは、オリジナル版よりワンランク上にアップしているわけだ。こうすることでアメリカ版『Shall we Dance?』は、主人公が生活の中で抱える漠然とした不満をより強調している。

 彼は他人から見れば非の打ち所のない、パーフェクトな生活をしている。しかしそれでも、人は自分自身の今の生活に不満を持ち、そこから抜け出したいと願うのだ。毎日毎日繰り返される、同じ仕事、同じ同僚の顔、同じジム通い、同じ夫婦の会話。こうやって版で押したように毎日繰り返される日々の中で、自分自身が少しずつ年をとっていく。なんとかそこから抜け出したい。でもどうやって? それは主人公にとって、社交ダンスを習うことだった。

 オリジナル版の主人公は、毎日ダンス教室の窓辺にたたずむ若い女性を見て、何とか彼女とお近づきになりたい、あわよくば親しい関係になりたいと願う。不倫願望とまでは言わないまでも、これはやはり一種の浮気心だ。だからこそヒロインに拒絶されると傷つき、一度はダンスをやめようかとも考える。このあたりが、リメイク版ではどうもスッキリしない。彼がダンスを習い始めなければならなかった動機付けが、いまひとつ弱い。一度はダンス教室から足が遠のいた彼が、ダンスを続ける理由付けも弱い。これは「既婚男性の浮気心」を認めず、罪悪視するアメリカだからこそ生じた脚本上の欠点だろう。

 オリジナル版のたまこ先生に相当するベテランのダンス教師が、小さなフラスコで酒をちびちび飲んでいるという描写は面白い。ダンス指導にすっかり熱が入らなくなっている教師が、主人公らのがんばりを見て再び奮い立つという新しいドラマがここに挿入されているのだ。ただしこのサイドストーリーを描くには、この映画のサイズがちょっとコンパクトすぎた。むしろダンス指導で再生していくヒロインという、オリジナルの形を踏襲したほうがよかったと思うけれど……。

 この映画は後半にオリジナルから大きく逸脱した脚色があって、僕はそれがどうも納得できない。ラストダンスで主人公とヒロインが踊らないと、ラストが締まらないと思うけどな。

(原題:Shall We Dance?)

4月29日公開予定 日劇3ほか全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2004年|1時間46分|アメリカ|カラー|ビスタサイズ|ドルビーデジタル、ドルビーSR、dts、SDDS
関連ホームページ:http://www.shallwedance-movie.jp/
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