ベルリン,僕らの革命

2005/2/17 メディアボックス試写室
ベルリンの若い反逆者たちが起こした重大犯罪の結末は?
弱点もあるが楽しめるし後味も爽やか。by K. Hattori

 住人が留守中の大邸宅に忍び込んでは、家財道具や調度品をめちゃめちゃに並べ替え、何も盗まず立ち去る“エデュケーターズ”という活動家グループ。その正体は、ベルリン市内で平凡な学生として暮らすヤンとピーターのコンビだった。彼らにとってこれは、金持ち優遇の世の中に反抗する孤独なレジスタンス。ところがピーターが旅行中、ヤンはピーターの恋人ユールを“エデュケーターズ”に引き入れる。無人の大邸宅に入り込み、好き勝手に家具を並べ替えるヤンとユール。ところがここに、思わぬ落とし穴があった……。

 『グッバイ、レーニン!』のダニエル・ブリュール主演の青春映画。親友同士の男ふたりの間に女性がひとり現れて三角関係になるという、『商船テナシチー』『突然炎のごとく』『冒険者たち』といった映画に連なるラブストーリーだ。しかしこれは映画の外枠でしかなく、恋愛映画としてはいささか退屈。それより面白いのは映画の後半にある、新旧学生運動家同士の世代を超えた対話だろう。

 日本でもそうだが、かつて学生運動が華やかなだった時代には、多くの学生たちが社会の不正に怒りの声をあげ、公正な社会の実現と自由獲得のために活動していた。しかしそうした運動が槍玉に挙げた社会不正や不平等がまったく改善されないまま、学生運動は衰退してしまった。かつての運動家たちはどこに消えたのか? じつは今ではすっかり立場を変えて、社会の不正や不平等の上にあぐらをかいて暮らすようになっているのではないか……。この映画の中では現代の「怒れる若者」であるヤンが、「怒りを忘れた元若者」に対して不満をぶつける。そして「元若者」もそんなヤンの姿を見て、自分の若い日を思い出し感傷にふける。「本当は今より昔のほうが、ずっと幸せだったのに……」。

 ちょっとやそっとのことでは怒りをあらわにせず、現状をありのまま受け入れてそれに満足して生きる。それが大人というものかもしれない。でもこの映画は、「そんなこと、ちっともカッコいいことじゃないぞ!」と言っているのだ。映画は最初から最後まで若者たちに同情的だ。「元若者」が自分の若い日を思い出し、若者たちに共感して協力的な態度を示すようになる様子は好意的に描かれているが、最後に彼が見せる姿はあまりにも無様で醜いものだ。

 映画の主人公はヤンとピーターだが、このふたりがあまり魅力的な人物とは描かれず、むしろ葛藤のすえに自分の生き方を変えるユールや、葛藤を経た上で元の生活に戻っていくハーデンベルグの方が人物像に深みがあって面白い。これはメインの料理より付け合せの野菜のほうが美味しいという話で、映画としてはいささかバランスの悪いものだと思う。

 しかし映画を観終わった印象はあくまでも爽やか。最後のどんでん返しが見事に決まったのがよかった。映画は締めくくりが大事だな〜と、改めて実感させられる。

(原題:Die Fetten Jahre Sind vorbei)

陽春公開予定 Bunkamuraル・シネマ
配給:キネティック、コムストック
2004年|2時間6分|ドイツ、オーストリア|カラー|ヴィスタサイズ|Dolby SRD
関連ホームページ:http://www.bokuranokakumei.com/
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