ウィンブルドン

2005/2/8 UIP試写室
ウィンブルドン大会でテニス選手同士が恋に落ちる。
ポール・ベタニーがテニス選手を熱演。by K. Hattori

 イギリスのテニス選手ピーター・コルトは、ウィンブルドンで開かれる全英オープン選手権で、テニス選手として有終の美を飾ろうと決めた。だが世界中から一流のテニス選手が集まる中、彼は優勝候補のアメリカの女性選手リジー・ブラッドベリーと知り合う。練習中に意気投合したふたりは、その場の流れと勢いで一夜を共にするが、翌日の試合でピーターは快勝。こうなるとゲンをかつぐのがスポーツ選手だ。ピーターは次の試合前に、再びリジーとデートすることにする。最初は互いに軽い気持ちで始まったふたりの関係。しかしこれがマスコミの知るところとなり、コーチでもあるリジーの父はピーターを娘と別れさせようとするのだが……。

 主演はポール・ベタニーとキルスティン・ダンスト。スポーツ選手同士を主人公にしたラブコメディだが、ふたりは直接対決するライバルではない。でも、これがよかった。ふたりは共に、自分自身と戦っている。スポーツ選手として自分自身の限界に挑む。自分をどこまでも追い込んでいく。そんな厳しさが、この映画からはひしひしと伝わってくる。コートの中の選手は、なんと孤独なことか。だからこそ、その孤独を理解しあえる相手とめぐり合えたふたりは離れがたくなってしまうのだ。

 試合シーンの多くは、実際に大会時期のウィンブルドンで撮影したのだという。客席にいる観衆などは、実際の試合を観に来た本物。ベタニーやダンストなどテニス選手を演じた俳優たちは、試合運びなどを綿密に計算した上で動作を振付けられ、そこに後から猛スピードのテニスボールをCG合成している。日本では『ピンポン』で採用された方法だが、この映画の試合シーンはまるで本物の迫力だ。まあ本物に見えないと、映画全体が台無しになってしまうのだけれど……。それにしてもお見事。

 遊びのつもりの恋愛ゲームが、いつしか互いに本気になってしまう話など、映画やドラマや小説の中でこれまで山のように作られてきている。ただしその場合「遊びの恋愛」を持ちかけるのはたいてい男性の側だった。ところがこの映画はその立場が逆になっている。女性の側が圧倒的な強者で、男性の側は相手に翻弄されるばかりの弱者なのだ。もちろん強いヒロインの映画はこれまでにもあった。でも強い女性の話を、女性に翻弄される「か弱き男性」の視点で描いているのが、この映画のユニークなところだろう。弱者が居直り開き直ってしまう図太さが、この映画のユーモアになっているのだ。

 他愛のないおとぎ話ではあるけれど、エピソードの随所についニヤニヤさせられてしまう皮肉がまぶしていあるのはイギリス映画のテイスト。いかにもアメリカン・ガールのキルスティン・ダンストは一種のタイプキャスティングだと思うが、ハードな役が多いポール・ベタニーがロマンティックな役を演じているのは珍しい。これは彼の代表作のひとつになるだろう。

(原題:Wimbledon)

4月23日公開予定 全国ユナイテッド・シネマほか
配給:UIP
2004年|1時間39分|イギリス、アメリカ|カラー|シネマスコープ|DTS、SRD-EX、SDDS、SR
関連ホームページ:http://www.uipjapan.com/wimbledon/
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