エメラルド・カウボーイ

2004/11/26 松竹試写室
コロンビアのエメラルドビジネスで大成功した日本人の半生を、
本人の監督・主演で映画化した究極の俺様映画。by K. Hattori

 エメラルドの産出量世界一のコロンビアに単身渡った日本人青年が、現地の採掘人から原石を数個ずつ買い上げるエスメラルデーロ仕事を振り出しに、原石の加工、輸出、鉱山の所有権まで持つ、コロンビア随一のエメラルド王になった実話の映画化。原作は早田英志の自伝「エメラルド・カウボーイズ」で、製作総指揮・脚本・監督・主演も本人というものすごい映画だ。

 もともとは俳優を使った普通の伝記映画になるはずが、コロンビアの山中でロケーション撮影する過酷さと危険に、主演俳優も監督も逃げ出してしまったのだという。普通はここで映画製作を投げ出してしまいそうだが、早田英志は不屈の闘士でその逆境に立ち向かい、アンドリュー・モリーナというまだ20代の映画監督と共同で、この自作自演・自画自賛の俺様映画を作ってしまったのだ!

 脚本は早田英志の単独名義になっているが、彼自身の現在を取材したドキュメンタリーから、一転して過去の回想シーンとなり、エピソードを数珠繋ぎにして最後に冒頭の現在に戻ってくるという構成はよくまとまっている。おそらくはクレジットされていないだけで、映画をよく知る人物の手による脚本だろう。立身出世を成し遂げた人物が自分の過去を回想するとなると、そこで自分自身を飾って言いたがるものだ。この映画もその点では例外でないだろう。一代でここまでの成功をなしえた人物ともなれば、あまり公にしたくないエピソードもあったに違いないが、それらはあまり映画に描かれていない。

 しかしこの映画のいいところは、隠すべきところは隠しても、それ以上話に尾ひれを付けているようには見えないところだ。何はともあれ、この男がたったひとりでゼロから今の地位を築いたのは間違いない。そこには当然、波瀾万丈のドラマがあったのだ。そして何よりいいのは、この映画が決して偉そうなお説教を叫び始めないことだろう。

 映画に描かれる早田英志の人生は、学校の道徳の授業で取り上げられるような立派さとは無縁だし、ビジネス誌が取り上げて他の会社経営者たちが参考にできそうな経営哲学とも無縁。ひたすらエメラルドビジネスだけを愛し、頭にかっと血が上れば後先考えずに突っ走る早田英志の生き方は、おそらく誰にもマネのできないものだと思う。そう考えると、このユニークな人物を説得力を持って演じられる俳優は、やはり早田英志本人しかあり得なかったであろうとも思えてくる。

 オフィスの机から大型の銃を当たり前のように掴みだして弾を装填し、ジーンズのベルトに無造作に突っ込むや、大勢のボディガードを引き連れて現場にすっ飛んでいく早田英志。その姿はビジネスマンというより、映画に出てくる麻薬王の姿に近い。誘拐や脅迫、鉱山の襲撃といった事態に、まったくひるむことなく銃で立ち向かう男。この役はどんな俳優が演じても、嘘っぽくなってしまったかもしれない。

(原題:Esmeraldero)

2005年お正月第2弾公開予定 シネセゾン渋谷
配給:アップリンク 宣伝:樂舎
2002年|2時間3分|コロンビア|カラー|1:1.85|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.uplink.co.jp/
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