オペラ座の怪人

2004/11/16 GAGA試写室
大ヒット舞台ミュージカルの完全映画化。衣装や美術は豪華。
音楽も最高。でもドラマは味わい薄いなあ。by K. Hattori

 全世界で8千万人が観たとも言われる大ヒット・ミュージカル「オペラ座の怪人」を、ジョエル・シュマッカー監督が映画化した。製作と脚本には舞台版の作者でもあるアンドリュー・ロイド・ウェバー本人も加わっている。ロイド・ウェバーは舞台ミュージカルの世界で数々のヒット作を生み出しながら、今までに映画化されているのは『ジーザス・クライスト・スーパースター』と『エビータ』しかなかったはず。シネミュージカルの全盛時代は1930年代から50年代。その後はミュージカルの本場ブロードウェイでも、ミュージカルはどんどん下火になっていく。ロイド・ウェバーはアメリカの映画と演劇界でミュージカルが退潮していった中で、イギリスから現れたミュージカルの救世主みたいな人物だ。

 ロイド・ウェバーのミュージカル映画化では、『ジーザス〜』が71年の舞台版のすぐ後、73年に製作されただけで、『エビータ』は舞台から29年後にマドンナ主演で製作されたのが話題となった。今回の『オペラ座の怪人』は『エビータ』ほどでもないが、それでも舞台版が86年初演だから、今年はそれから18年たっている。映画化の企画は舞台版の成功直後にロイド・ウェバー本人からジョエル・シュマッカーに持ち込まれ、紆余曲折あった後に今回とうとう映画が実現したということらしい。これを遅いと言うなかれ。「キャッツ」(舞台は81年初演)だって未だに映画化されていないのだから……。(でも今年は「アスペクツ・オブ・ラブ」も映画化されるらしい。)

 ミュージカル映画では俳優が吹き替えをするのが当然とされているが、今回の映画では主演クラスの俳優が全員ちゃんと本人の声で歌っているらしい。ヒロインのクリスティーヌを演じるのは、『歌追い人』でも可憐な歌声を披露していたエミー・ロッサム。彼女はもともとクラシック畑出身なので、今回の役はまさに打って付け。1986年生まれだからまだ十代。ミュージカル映画全盛期なら大スターになったであろう逸材ですが、今はなかなか本領発揮できるチャンスに恵まれない。今回の役は彼女の代表作になるでしょう。

 ファントム役のジェラルド・バトラーは『ドラキュリア』や『タイムライン』に出演していた俳優で、ミュージカルはこれが初めてだという。それでこれだけ歌えるのか! ラウル役のパトリック・ウィルソンは『アラモ』に出演しているが、もともとは舞台ミュージカルの若手スター。でも一番驚いたのは、ミニー・ドライヴァーが歌っていたことかも。

 映画としては舞台装置や衣装が立派だし、何よりも音楽が素晴らしい。でも主人公たち3人の愛憎関係が、それらの立派さに負けていたように思う。いまいち登場人物たちの気持ちに乗れないのだ。回想形式は舞台版と同じようだけれど、ドラマを何度も分断することで、観ている側はストーリーから気持ちが離れてしまうのかもしれない。

(原題:The Phantom of the Opera)

※ミニー・ドライヴァーの劇中での歌はマーガレット・プリースによる吹き替え。ドライヴァー本人の歌声はエンドロールに流れる「Learn To Be Lonely」で聞くことができます。

12月29日公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2004年|2時間23分|アメリカ、イギリス|カラー|シネマスコープ|ドルビーSR、ドルビーデジタル、dts、SDDS
関連ホームページ:http://www.opera-movie.jp/
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