スカイ・キャプテン

ワールド・オブ・トゥモロー

2004/10/04 日劇3
デビュー作でいきなりこんな映画を作ってしまう監督のすごさ。
先物買いのつもりで観ておいて損はない。by K. Hattori

 1939年、雪のニューヨーク。エンパイアステートビルに係留されたドイツの大型飛行船ヒンデンブルグIII号から、ひとりの科学者が姿を消した。NYクロニクル紙の女性記者ポリー・パーキンスは事件を独自に調査しようと街に飛び出すが、彼女がそこで見たのは空を埋めつくすようにして飛来する巨大ロボット軍団だった。摩天楼の谷間を我が物顔に歩き回る鋼鉄の巨人たちに、警察も軍隊もまったくなすすべがない。そこにさっそうと現れたのは、緊急指令を受けて駆けつけたスカイ・キャプテンと愛機P-40ウォーホークだ!

 俳優や最小限のセット以外はすべてCGというデジタルムービー。劇映画よりむしろアニメやゲームに近い画調なのだが、この映画は陰影が濃く色を整理したイラスト風の絵作りを徹底して、ファンタジックで同時に少しノスタルジックな作品世界を作り上げている。それを一言で言いあらわすなら、昔懐かしい空想科学読み物の世界だ。日本で言うなら手塚治虫のSF漫画や、小松崎茂の描く近未来SFのような世界。

 作品のコンセプトとしては、往年の連続活劇やヒーローアニメ、特撮映画のパスティーシュだろう。勝ち気なヒロインと、剛胆なヒーローという組み合わせはインディ・ジョーンズ・シリーズを連想させるが、そもそもインディ・ジョーンズ・シリーズがかつての連続活劇の模倣なのだ。ヒロインが男勝りの女性新聞記者で、その恋人が世界を救うヒーローという組み合わせは、ロイス・レーンとスーパーマンを連想させるが、登場するロボットも含めて、この映画はフライシャー兄弟が作ったアニメ映画『スーパーマン』に大きな影響を受けているという。

 ラジオ電波が空中で円弧を描くとか、地図の上を飛行機が飛ぶとか、光線銃からドーナツ状の光がゆっくり飛び出していくとか、ロケットが銀色にピカピカ光ってそそり立っているとか、「そうそう、昔の映画ってそうなってたよな!」という懐かしい驚きがたっぷり。主人公の乗った飛行機が燃料補給なしに地球の裏側まで飛んでしまうとか、機体の中にあっと驚く秘密兵器や特殊機能が組み込まれているのも楽しいし、劇中に『オズの魔法使』を引用した後、映画の最後にもそれを再度形を変えて引用するのも「なるほど」と思わせる。加えて言えば、天才科学者トーテンコフ博士を演じているのがローレンス・オリビエというのも泣かせる。もちろんオリビエ本人は死んでいるので、これは既存のフィルムを編集して使っている。これが意外な伏線に……。

 そもそも監督のケリー・コンランが、自宅のパソコンで「ワールド・オブ・トゥモロー」という6分間の短編映画を作り、それを拡大する形で今回の映画が作られたとのこと。新人監督の映画で、しかもインディーズ作品。それでいて製作費が概算4千万ドルで、全米公開初登場で第1位のヒットに。これはちょっとしたアメリカンドリームだ。

(原題:Sky Captain and the World of Tomorrow)

今秋公開予定 日劇3他・全国東宝洋画系
配給:ギャガ・ヒューマックス共同配給
2004年|1時間47分|アメリカ、イギリス、イタリア|カラー|アメリカンビスタ
関連ホームページ:http://www.skycaptain.jp/
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