キャットウーマン

2004/09/09 ワーナー試写室
ハル・ベリーのキャットウーマンだけでも一見の価値あり。
とにかく明るく楽しい映画なのだ。by K. Hattori

 『バットマン』シリーズの新作がなかなか公開されないうちに、シリーズからスピンオフする形で『キャットウーマン』の登場だ。映画に登場したキャットウーマンでは、ティム・バートン監督の『バットマン・リターンズ』で、ミシェル・ファイファーが演じた同役が印象深い。陰謀に巻き込まれて無惨に殺された罪のない女が、猫の霊力を得て復活するのだ。この基本設定は、今回の映画でもそのまま受け継がれている。新しいキャットウーマンを演じるのは、『チョコレート』でアカデミー賞を受賞したハル・ベリーだ。

 大手化粧品会社でデザイナーとして働くペイシェンス・フィリップスは、社運をかけた新製品“ビューリン”に重大な副作用が隠されているという秘密を知ったことで殺されてしまう。だが彼女は神秘の猫の力でキャットウーマンとして新しい生を受け、自分を殺した者が誰なのかをつきとめようと活動を開始するのだ。キャットウーマンとして目覚めたペイシェンスは行動も大胆になり、堅物刑事トム・ローンとの恋も芽生えるのだが……。

 ストーリーはキャットウーマンの復讐劇が主になっているが、テーマは「現代女性にとっての幸福は何か?」という問題だ。12年前の『バットマン・リターンズ』において、キャットウーマンは自らを地獄に追い込んだ相手に復讐するため、他のすべてが犠牲にした。しかし今回のキャットウーマンは、そんな犠牲を自らに強いない。彼女は自分が欲しいものすべてを手に入れる。静寂の中での眠り、かっこいいバイク、美しい宝石、お気に入りの男との恋愛……。彼女にとっては「敵に対する復讐」さえも、欲しいものリストの中のひとつのアイテムに過ぎないかのようだ。

 キャットウーマンにとって最大の武器は「自由」なのだという。「復讐」にとらわれていては、本当の「自由」など得られない。何かを手に入れても、それを手放さなければならないのがキャットウーマンにとっての「自由」の代償かもしれない。キャットウーマンは何も所有しない。彼女は一流の広告デザイナーとしての地位を捨て、盗み出した宝石を店に返却し、復讐も棚上げし、恋人のもとからも去っていく。しかしそこに悲壮感はない。『バットマン・リターンズ』のキャットウーマンに惚れ込み、「キャットウーマンには悲壮美こそ不可欠!」と思いこんでいる人は、今回の新しいキャットウーマンに物足りなさや不満を感じるかもしれない。僕はどっちも好きだけどね。

 ピトフ監督の映像はケレン味たっぷりで、今回の映画にはピッタリだったと思う。キャットウーマンが走り回るアクションをCGにする部分は、『スパイダーマン』や『ロード・オブ・ザ・リング』に比べるとまだ違和感があるが、カポエラを基本にしたという格闘シーンはかっこよかった。ハル・ベリーのキャットウーマンぶりも様になっているが、シャロン・ストーンの悪女役も最高です!

(原題:Catwoman)

11月上旬公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画
2004年|1時間44分|アメリカ|カラー|シネマスコープ・サイズ|SRD、SDDS、DTS
関連ホームページ:http://www.catwoman.jp/
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