釣りバカ日誌15

ハマちゃんに明日はない!?

2004/08/16 松竹試写室
シリーズ17作目は主役コンビが脇に徹した恋愛ドラマ。
相変わらず楽しいが気になる点も……。by K. Hattori

 『釣りバカ日誌』シリーズの17作目。このシリーズは西田敏行演ずるダメ社員のハマちゃんと、三國連太郎演じる鈴木建設社長の凸凹コンビが売りだが、このふたりが物語を引っ張る時もあれば、脇に回ってゲストを盛り立てる回もある。前作『釣りバカ日誌14/お遍路大パニック』でふたりが大活躍していたこともあってか、今回はふたりが完全に脇に回ってゲストの引き立て役に徹しているように見える。

 もちろん観客が期待するポイントには、きちんとふたりが現れて期待通りの芝居を見せるのはいつも通り。例えばそれは営業三課におけるハマちゃんと新課長の駆け引きや、佐々木次長とのやり合いであり、ハマちゃん宅にぶらりと現れたスーさんのマイペースぶりだったり、ハマちゃんとみち子さんの合体不成立だったり、すっかり生意気に成長した鯉太郎だったりするのだ。だが今回ハマちゃんもスーさんは、ゲストの登場人物にあまり深く関わっていかない。あくまでも通りすがりのポジションだ。シリーズ中でこうして主人公のポジションを移動していく呼吸は、脚本の山田洋次が寅さんシリーズの中で身につけたテクニックなのかもしれない。

 今回の主役は江角マキコが演じる企業コンサルタント早川薫と、筧利夫が演じる水産試験場の研究員・福本哲夫だ。一流企業をいくつもクライアントに持ち、これまでにも多くの事例で評価を上げてきた薫だが、キャリア組、30代後半、未婚という典型的な「負け犬」の人生に疲れを感じ始めていた。そんな時再会したのが、高校時代に同級生だった福本。かつて薫に思いを寄せていた彼は、今も仕事に没頭する独身男だった。ところが彼には縁談話が進んでおり……。

 都会での仕事や生活に疲れた女が、故郷に戻って幼なじみと結婚するというありふれた話。この男女のドラマに、ハマちゃんやスーさんはまったくからまない。薫は勝手に帰郷し、勝手に結婚する。いつもいつもハマちゃんやスーさんが恋のキューピットを演じる必要はないのだが、このように傍観者になりっぱなしというのもちょっと寂しい。

 ハマちゃんの天真爛漫さや傍若無人さはそれだけで「芸」になっているわけだが、今回の映画ではそれが近所迷惑なレベルにまで達していたのが少々不快でもあった。新幹線の中で携帯電話で大声で話すなど言語道断だし、仲人の仕事をすっぽかして釣りをするというのも非常識。ハマちゃんを常識で測ってはいけないとはわかっていても、こんな人が近くにいたら迷惑だろうなぁと思う。こうしたハマちゃんの非常識人間ぶりは、観客をイライラさせることはあっても共感は得られないのではないだろうか。

 映画の中で小津安二郎の『麦秋』を引用しているのだが、薫が祖母の家に入ると突然カメラがローポジションになってカット割りまで小津調になるのは違和感ありすぎ。ここだけ映画の空気がガラリと変わってしまうのだ。

8月21日公開予定 丸の内ピカデリー2他・全国松竹東急系
配給:松竹
2004年|1時間47分|日本|カラー
関連ホームページ:http://www.tsuribaka-movie.jp/
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