トッポ・ジージョのボタン戦争

2004/07/14 映画美学校第2試写室
1967年に市川崑が監督した劇場版のトッポ・ジージョ。
う〜ん、この暗さが60年代なのかも。by K. Hattori

 世界的なネズミのキャラクター人気ランキングを作るとしたら、1位は間違いなくミッキーマウス。2番目はトム&ジェリーのジェリー君あたりで間違いないだろう。そして3番目の地位を争っているのが、スチュアート・リトルとトッポ・ジージョではないだろうか。トッポ・ジージョは人形劇団を主宰するマリア・ペレゴというイタリア人女性が、今から50年ほど前に生み出したキャラクターだという。1953年にヨーロッパ各国で人気者となり、63年にはアメリカ進出、66年には日本にもやってきて人気者となったらしい。『トッポ・ジージョのボタン戦争』は、そんなジージョ人気の中で作られたものだろう。

 主人公ジージョはイタリア生まれのキャラクターだが、この映画は完全に日本製だ。製作・脚本・監督は市川崑。脚本・作詞・Gag Manとして永六輔が参加し、音楽は彼と一緒に「上を向いて歩こう」や「こんにちは赤ちゃん」など数々の名曲を作っている中村八大が担当している。ジージョを操っているのはマリア・ペレゴ本人だが、声を担当しているのは中村メイコ。物語の舞台はイタリアの某所になっているようだが、出演者はほとんどが日本人。人間の顔が直接でないようにいろいろな処理はしているのだが、それでも昔の日本人は、どこから見ても体型でそれがバレバレなのだ。

 市川崑の映画としても、これはかなりの珍品ではないだろうか。シネマスコープの人形劇というのは画面構成がかなりきついと思うのだが、市川監督はシルエットやシャドーを多用して、横長の画面を大胆に切り取っている。今なら無難にビスタサイズぐらいで収めるところだろうが、何が何でもシネスコサイズというところに時代性を感じないでもない。

 夜の町に出たジージョが赤い風船と出会って友情を育む話と、武装ギャング団の銀行襲撃の話が並行して進み、最後にジージョの機転で強盗団は一網打尽になる……というお話。映画の中に突然『黄金の七人』などという台詞が出てくるところに、どうしようもなく時代を感じさせる。「赤い風船」というのは、アルベール・ラモリスの『赤い風船』を意識しているのだろうか。足だけ登場するアベックのファッションも時代だなぁ。舞台は(たぶん)イタリアのはずなのに、ジージョが使っているハミガキが「ライオンこどもはみがき」というのもすごい。なんだかチグハグもいいところなのだ。

 それより僕が気になったのは、この映画がひどく暗いこと。画面は常に半分以上がシルエットで真っ黒に塗りつぶされており、そこにライトで照らされたものだけが浮かび上がってくる。まるで舞台劇のようなライティングだ。話の方も暗いだろう。ほのぼのしたネズミのキャラクターと、マシンガンで武装したギャング団を組み合わせるアンバランスさ。おしゃべりのネズミと、赤い風船の友情とロマンスというのも、最初から悲劇が予感されていて寂しい。

9月4日公開予定 ユーロスペース
配給:ケイブルホーグ
1967年|1時間32分|日本、イタリア|カラー|シネマスコープ
関連ホームページ:http://www.cablehogue.co.jp/
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