ぼくセザール 10歳半 1m39cm

2004/06/19 パシフィコ横浜
10歳半の子供が繰り広げる大冒険をいきいきと描く。
登場人物たちがみんな魅力的。by K. Hattori

 10歳の子供は、世間の大人が考えているほど「子供」ではない。知識や経験の差はあれど、考えることや行動力はもうしっかりと大人並みなのだ。どんな大人にもちゃんと10歳の頃はあったはずなのに、大人になるとそんなことをすっかり忘れてしまう。でもこの映画を観ると、誰だって自分が10歳だった頃のことを思い出すに違いない。

 主人公セザールは10歳半の小学生。少し前に転校してきた美少女サラに恋をしたセザールだったが、彼女とはなかなか親しくなるきっかけがつかめない。同じ頃、彼の父親が共同経営者の残したもめ事に巻き込まれ、警察に事情聴取を受けるという事態が発生。それから間もなく、父は「母さんを頼んだぞ」と言い残して出張という名の長い旅に出て行った……。セザールはすぐにピンとくる。これは仕事の出張なんかじゃない。父さんは警察に逮捕されて刑務所に連れて行かれたんだ! このことを親友モルガンに話したところ、セザールの父逮捕さるのニュースは学校中を駆けめぐり、犯罪者の息子セザールは生徒や先生たちから一目置かれることになった。もちろん愛しのサラも! ところがしばらくすると、セザールの父は何事もなかったかのように“出張”から帰ってきてしまった。

 映画はすべてセザールの一人称ナレーションで語られる。物語には大きくふたつのエピソードが語られる。前半ではセザールの父の「誤認逮捕事件」(警察が父を誤認逮捕したのではなく、父が逮捕されたとセザールが勝手に誤認した)で笑わせ、後半ではモルガンの父親を探すため、セザールたちは言葉も通じぬロンドンへと移動する。

 監督は俳優のリシャール・ベリ。『バティニョールおじさん』のジュール・シトリュクがセザールを演じ、テレビの人気子役マボ・クヤテがモルガン役。監督の実の娘であるジョゼフィーヌ・ベリが、セザールの恋人(?)サラを演じている。こうした子供映画の場合、周囲をベテラン俳優で固めるのが常。セザールの両親役にはジャン=フィリップ・エコフェとマリア・ド・メヂイルシュ(マリア・デ・メディロス)。彼女が出演している『パルプ・フィクション』が、劇中にちらりと引用されているのは映画ファン向けのギャグだろう。セザールたちがロンドンで出会うグロリアという女性役で、アンナ・カリーナが出演している。

 映画は最初から笑いで一杯なのだが、誤認逮捕事件にしろ父親探しにしろ、ベースになっているのは「家の中には自分の知らされていない秘密がある」という子供が持つ大人への不信感だ。セザールが父親を犯罪者に仕立ててしまうのも、モルガンが父親を探しに行くのも、自分たちを子供扱いする大人に対する反逆の一種と考えられるのではないだろうか。

 どのキャラクターも魅力的で、ぜひぜひこの子供たちのその後が観たい! 間を置かず(子供が大きくならないうちに)続編を作ってほしいなぁ。

(原題:Moi Cesar 10 ans 1/2 1m39)

6月19日上映 パシフィコ横浜
第12回フランス映画祭横浜2004
配給:アスミック・エース
2003年|1時間39分|フランス|カラー|ドルビー
関連ホームページ:http://www.unifrance.jp/yokohama/
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