2004/06/11 映画美学校第2試写室
4人の監督による「穴」をテーマにしたオムニバス映画。
若手2監督の映画がなかなか痛快。by K. Hattori

 「穴」をモチーフにしたミステリアスでファンタジックな短編映画を、『発狂する唇』の佐々木浩久監督、『東京ハレンチ天国』の本田隆一監督、『千里眼』の麻生学監督、『地獄甲子園』の山口雄大監督が共作したオムニバス映画。すべてビデオ撮りの低予算映画だが、上映時間が各20分強は民法の30分ドラマと同程度の尺だろう。ビデオ映像特有の城っぽい画面が映画の安っぽさをより強調しているにせよ、もう少しボリューム感のある物語世界を作ってほしいなぁと思う4本だった。以下それぞれの簡単な感想。

 佐々木浩久監督の『胸に開いた底なしの穴』は、主演が三輪ひとみというだけで、猛何やら怪しげなムードたっぷりの怪作。地面からにょっきりと突き出した手に触れたヒロインが、家族の過去と現在の交錯する奇妙な世界に入り込んでいく。モチーフになっているのが「アナ」ではなく「アザ」である点が、既に反則のような気がしますけど……。最初に腕を見つける廃校のような場所や、ヒロインがかつて住んでいた家、マンションなど、ロケーションによる空間処理が雰囲気を盛り上げているけれど、話はさっぱりわからない。

 本田隆一監督の『青春の穴』は死体を埋め山に入った3人のヤクザが、穴に棄てた死体が帰ってきたことで大騒ぎをするホラー・コメディ。主演が元チェッカーズの藤井尚之。出演している山本浩司が脚本も書いている。これは「穴」をそのまま正面からモチーフにしているし、話も面白かった。ギャグもなかなか。でも落ちはありきたりだったかも。「俺、何になりたかったんだっけ?」という主人公が、藤井フミヤになって登場したら驚いただろうけど。どうせならそのぐらい無茶苦茶やってほしかった。でも松本未来には笑う。笑いの上でのクライマックスはここだろう。

 麻生学監督の『夢穴』は尾美としのり演ずる主人公が、夢の中で初恋の女性に再会するとそれが現実になるという話。これは話のアイデアがそこそこ面白いのだが、あともうひとひねりほしい。どこか理屈の上で辻褄が合わないような気がする。リアルな話の部分に現実味が乏しいので、ファンタジーとしても切れ味の鈍いものになる。モチーフである「穴」も最後に取って付けた感じ。

 山口雄大監督による最終話『怪奇穴人間』は江戸川乱歩風の怪奇譚で、落ちもきれいに決まっている。でもちょっと悪ふざけしすぎかな。これを粘着質にコッテリと撮りきれば、なかなか面白い映画になっていたのかも。でもそうするとパロディとしての軽さが減るか……。ちょっと中途半端なのかな。

 ベテランの監督が課題の「穴」を軽く扱っているのに対して、若手の本田・山口が「穴」に真っ正面から挑んでいるのが印象的だし好感も持てる。このふたりには今後も期待。佐々木監督はもう自分の世界が出来上がってしまっている。麻生監督は小手先のドラマは作れても、話としてはパワー不足で退屈だ。

7月10日公開予定 ユーロスペース(レイト)
配給・宣伝:ケイエスエス
2003年|1時間34分|日本|カラー|ビスタサイズ|ステレオ|DV
関連ホームページ:http://www.kss-inc.co.jp/
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