プッシーキャット大作戦

(併映:ズベ公同級生)

2004/06/02 GAGA試写室(赤)
『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』のパロディ。
主演の水谷ケイが格好よすぎる! by K. Hattori

 『東京ハレンチ天国さよならのブルース』の本田隆一監督の新作。下敷きになっているのは巨乳映画の巨匠ラス・メイヤーの中期代表作『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』だ。グラマーなゴーゴーガールが車で田舎に出かけ、そこで行き当たりばったりの人殺し行脚。金持ちの老人がいると聞き込んでそこに乗り込んでいくのだが……というお話の展開はまったく同じ。

 ただし『プッシーキャット大作戦』の舞台は日本の東北地方。主人公のゴーゴーガールたちが乗る車は軽トラックで、彼女たち始め全登場人物が東北弁丸出しという異色作。しかもロケ地は真冬の八丈島って、もうどうなってるんだかよくわかんない不思議ワールド全開! なおオリジナル版『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』を含むラス・メイヤーのDVD-BOXがこの映画の配給宣伝会社から発売されているが、日本語字幕は標準語・東北弁・関西弁から選べるようになっている。たぶんアイデアの源はこのあたりにあるのだろうが、ラス・メイヤーと東北弁という組み合わせを考えた人は偉い。ヤクザ映画では登場人物たちに関西弁をしゃべらせた時点で、物語の中で何が起きても不思議でない異世界が出来上がるのだが、東北弁でもそれが可能だというのは新しい発見だった。(考えてみれば、宮澤賢治なんかもその手の異世界路線だよなぁ……。)

 登場人物たちの誰ひとりとしてクスリとも笑わないのに、全編にニヤニヤゲラゲラの爆笑コメディになっている。笑いのツボは人によって違うのだろうが、僕はハリーが大真面目な顔で「そりゃ不可抗力でねえか」とつぶやいたあたりでツボにはまってしまった。あとは「さざえの数え歌」とか、「さざえパーティー」とか、監督が繰り出すギャグに次々反応させられてします。見事に監督に手玉に取られてしまったわけだが、社会的なテーマも思想性もまったくないこうした映画ではそれが気持ちいいのだ。オリジナル版『ファスター・プッシーキャット キル!キル!』が持っていたラジカルな女性至上主義すら、この映画の中ではものの見事にギャグにされてしまっているのだ。

 同時上映の『ずべ公同級生』は、スケベな男たちを手玉にとって金を巻き上げるズベ公軍団と、殺し屋組織からリストラされてしまった若い殺し屋が出会い、組織への復讐を計画するというお話。女たちが抜群のチームワークで男たちから金をむしり取る様子を、テンポよく描写するオープニングの格好良さ。そこから殺し屋の話になると、「ルパン三世」や「スパイ大作戦」などによく出てきた、顔全体を覆う形の変装用マスクが登場して懐かしさに涙が出てきてしまう。『ミッション・インポッシブル』のようにCGで処理せず、マスクをはがす様子をカット割りで処理するあたりがまたいいのだ。復讐計画がいつしか置いてけぼりになるエンディングも人を食っていていい。

7月公開予定 テアトル新宿(レイト)
配給:バイオタイド
2004年|43分(18分)|日本|カラー|ビスタ|ステレオ
関連ホームページ:http://www.biotide.co.jp/
ホームページ
ホームページへ