スターシップ・トゥルーパーズ2

2004/05/12 ソニー・ピクチャーズ試写室
SFアクション大作『スターシップ・トゥルーパーズ』の続編。
監督はフィル・ティペット。by K. Hattori

 1997年に製作されて翌年GWに日本でも公開された、ポール・バーホーベン監督のSFアクション大作『スターシップ・トゥルーパーズ』の続編。登場するキャラクターなどに連続性はないのだが、一応は前作の後の時代の物語ということになっている。人間と昆虫型エイリアンの戦いという前作の設定だけ借りているので、もはやハインラインの原作とのつながりはほとんどない。もっとも前作にしても、ハインラインの原作とはまるで雰囲気の違うものになっていたのだけれど……。

 監督は前作で特殊効果を担当したフィル・ティペットで、今回の映画が彼の監督デビュー作。シリーズ1作目の特撮マンが2作目の監督を担当した例としては、『ザ・フライ2/二世誕生』のクリス・ウェイラスの例がすぐに思い出される。クリス・ウェイラスはその後監督として名前を聞かなくなってしまったのだが(特撮やメイクアップのスタッフとしても消えてしまった)、さてフィル・ティペットはどうなることか。

 今回の映画は新人監督のデビュー作ということもあってか、1作目に比べるとずっと低予算の作品になっている。屋外シーンはすべて夜間で、物語の途中からは舞台の大半が屋内になり、無数のバグズたちがうじゃうじゃ動き回るというシーンはずいぶん減っている。キャストも名前や顔に馴染みのない人たちばかり。話のスケールもずっと小さくなっている。

 バグズに取り囲まれて孤立した歩兵部隊は、命からがら半壊状態で無人となった前線基地に逃げ込む。だがそこにバグのスパイが入り込んで、生き残った隊員たちの身体を次々に乗っ取っていく……。これは『遊星からの物体X』と同じアイデアの、古典的なSFスリラーなのだ。物語自体にはまったく新しさが感じられない。

 マスコミ報道や政府広報が伝える戦争の様子と凄惨な戦場の実体を対比させ、戦争プロパガンダを痛烈に皮肉ってみせるあたりは前作『スターシップ・トゥルーパーズ』とまったく同じ。だが前作と違うのは、1997年時点でアメリカは戦争をしていなかったけれど、今度は実際の戦争の真っ最中にこういう映画が作られているということだ。映画の最後に登場する「戦場のヒーロー」の姿が、イラク戦争で人質となって後に救出されたジェシカ・リンチなどとダブってくるのは必然だ。テレビの前で日々戦争報道を見ている我々としては、この映画を観て複雑な気分にならざるを得ない。

 この映画はアメリカを含めて世界のほとんどの国で劇場公開されず、映画館での公開は日本が世界初となるようだ。これは「映画がさして面白くない」という理由によるものなのか、それとも「この時節にこの映画はないだろう」という事情によるものなのか、あるいは単に最初から劇場公開する気がなかったのか、そのあたりの事情はよくわからない。でもなんだか変な時期に変な映画が作られたなぁ……という印象は強く残る。

(原題:Starship Troopers 2: Hero of the Federation)

※映画瓦版の速報版にも書いたが、この映画はアメリカで劇場公開されることなくテレビ放送され、その後DVD発売されている。IMDbを見ると劇場公開されるのは日本のみのようで、他の国ではいきなりDVD発売されている様子だ。

6月12日公開予定 銀座シネパトス、シネマメディアージュ
配給:ソニー・ピクチャーズ 配給協力:メディアボックス
2003年|1時間32分|アメリカ|カラー|ビスタ|ドルビーSR
関連ホームページ:http://www.sonypictures.jp/
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