友引忌/ともびき

2004/04/21 松竹試写室
大学時代の友人たちが次々殺されるのは自殺した女の呪いか?
青春映画とホラー映画の巧みな融合。by K. Hattori

 さまざまな思い出を残して、仲間たちが大学を卒業してから2年。大学院に残っていたヘジンのもとに、卒業後アメリカに渡ったまま行方不明になっていた親友ソネがやってくる。憔悴しきった表情の彼女は「ギョンアがどこまでも追いかけてくる」とつぶやき、ヘジンを驚かせた。ギョンアは2年前に死んでいるではないか……。その直後から、ヘジンは死んだギョンアの幻を見るようになる。やがて大学時代の仲間たちが、次々に変死していく。これは死んだギョンアの呪いなのか? いったい彼女は、どんな怨みを残してこの世を去ったというのだろうか?

 韓国のアン・ビョンギ監督が、『ボイス』の前に撮ったホラー映画。大学を卒業してそれぞれ別の道に進んでいる昔の仲間たちが、ある事件をきっかけに再び集まるというのは、『セント・エルモス・ファイアー』などと同じ青春映画の王道パターン。この映画はそこに、『キャリー』や『リング』に通じる「いじめられっ子の超能力者」というキャラクターを乗せ、メンバーが次々に残忍な殺され方をする連続猟奇殺人の要素を加えている。要するに、いろんな映画のいいとこ取りなのだ。

 亡霊となってヒロインや仲間たちを悩ませるギョンアを演じるのは、『リメンバー・ミー』や『ボイス』に主演していたハ・ジウォン。『ボイス』であどけない少女が奇声を上げながら白目をむくシーンで観客をイヤ〜な気分にさせたアン監督は、この映画でも美人のハがヒステリックな金切り声を上げながら白目をむくというイヤ〜なシーンを見せてくれる。これは「恐い」という以前に、「見てはいけないものを見てしまった」という後ろめたさで観客の背中に冷たい汗が浮かぶ。『ボイス』の少女はこの映画の進化型だったらしい。

 脚本にはまだ練り込まれていない部分も多い。例えばなぜ一連の事件が、ギョンアの死から2年たって発生するのか。事件の真相を語るビデオテープは、誰が撮影したものなのか。おそらく連続殺人の犯人はソネなのだろうし、ビデオテープは『リング』の呪いのビデオと同じ念写なのだ。このあたりをもう少し明確にしていくと、脅迫観念に取りつかれた殺人鬼の物語と、殺された超能力少女の怨念という超常現象の要素がうまくブレンドされた、新しいホラー映画になったのではないだろうか。(もしこの映画を日本でリメイクするなら、これらの点を考慮してください。)

 もっともこの映画の作り手は、そうした「理屈」が観客を恐がらせるものではないことを見抜いていたのかもしれない。観客が求めるのはもっと根元的な恐怖だ。それは理解できない不可解なものであり、人間の生理に直接ひびく不快感や痛みに近い感覚。つまりそれが、「白目をむくヒロイン」なのかもしれない。小難しい理屈より、ハ・ジウォンの白目の方が、遙かに観客を震え上がらせるのは確かなのだ。甘いところもあるけれど、これはこれでいいのだろう。

(英題:Nightmare)

7月3日公開予定 新宿シネマミラノ他
配給:松竹 宣伝:パンドラ 宣伝協力:スキップ
2000年|1時間37分|韓国|カラー|アメリカンビスタ|SRD
関連ホームページ:http://www.tomobiki.jp/
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