女性の身でありながら、武闘派のやくざ組長として多くの部下を抱えるウンジン。天涯孤独だと思われていた彼女には、幼い頃生き別れた姉がいた。八方手をつくしてようやく巡り会えた姉。だが姉は末期ガンで余命幾ばくもないのだという。血を分けた姉のために、どんな願いでも叶えてやりたいと願うウンジン。だが姉の口から出た願いは、「妹ウンジンの花嫁姿が見たい」というもの。姉の最後の願いを叶えようと、似合わない見合いの席に挑んだウンジンだったが……。
韓国で大ヒットしたアクション・コメディ映画で、アメリカのミラマックス社が110万ドルでリメイク権を購入したという話題作。話の作りはひどく粗っぽく、演出にも取り立てて目新しさは感じられない。しかし映画が面白く観られるのは、登場するキャラクターに魅力があるからだろう。ヒロインのウンジンを筆頭に、個性的な部下たちや、相手の素性を知らぬまま結婚してしまったウンジンの亭主、ウンジンを実の息子(?)のように可愛がるやくざ組織の会長まで、どれもこれもチャーミングな人間味にあふれている。主人公たちと敵対するやくざ組織や街のチンピラまでもが、一度観たら決して忘れられない個性を発揮していて憎めないのだ。
ウンジンを演じているシン・ウンギョンがいい。この役が本物のやくざに見えるかどうかはともかく、自分自身を女性としてまったく意識していない荒くれ者という感じがよく出ている。精一杯化粧をしてきれいなドレスを着ても、歩く姿は男子校の文化祭で女装させられた運動部員のように見えてしまう。そんな彼女が見合いの席で相手にすごむシーンは思わずニヤニヤ笑ってしまうし、街でからんできたチンピラたちと殴り合いのケンカをするシーンなどは心の中で拍手喝采!
間抜けな役所の職員をつかまえて無事結婚に成功したウンジンが、姉から「次は赤ちゃんね」と言われて子作りに励むくだりはお話としてだいぶ無理がある。そもそも夫はウンジンと夫婦らしい営みがしたくて仕方ないのだから、彼女がセックスの実技指導など受ける必要はあるまいに。ただしこういうベタベタな笑いが緩衝剤になって、ヒロインのセックスというテーマがあまり生々しくならないという効果はあるだろう。でもこのあたりの泥臭さが、僕はどうも気になって仕方がない。まぁこれはこれで、作品のカラーには合っているのかもしれないけれど……。
作りの粗っぽさはマイナスだが、この映画を僕は嫌いになれない。それはやはり、登場人物たちの面白さゆえだろう。既に韓国では公開済みのパート2も、できれば観てみたいと思うほどだ。はたしてパート2は日本公開されるのか? 日本では公開される劇場規模が小さいので、最初から大きなヒットは見込んでいないようだ。パート2については、よくてもビデオ市場に直行といったところだろうか。少し残念な気もする。
(英題:My Wife is a Gangster)
DVD:花嫁はギャングスター
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