THREE/臨死

2004/03/05 メディアボックス試写室
アジアの監督3人が集まって作ったホラー・オムニバス。
アイデアは面白いがボリューム感に欠ける。by K. Hattori

 『クワイエット・ファミリー』や『反則王』などの作品で知られる韓国の映画監督キム・ジウン、『ナンナーク』『ジャンダラ』などが日本でも公開されているタイの映画監督ノンスィ・ニミブット、そして『月夜の願い』『君さえいれば/金枝玉葉』『ラヴソング』などが日本でもヒットした香港の映画監督ピーター・チャン。その3人が1本ずつ監督したホラー・オムニバス映画が本作『THREE/臨死』だ。第1話はキム・ジウンの「memories」、第2話がノンスィ・ニミブットの「the wheel」、第3話がピーター・チャンの「going home」という構成。上映時間は3本まとめて2時間7分。以下、第1話から簡単なストーリーと感想。

 第1話「memories」。郊外の新築マンションで暮らすソンミンの妻は、彼と娘を残したまま突然姿を消してしまう。いったい妻の身に何が起きたのか? そんな夫の気持ちも知らぬまま、ソンミンの妻は朝の路上で目を覚ます。どうやら気を失っていたらしい。しかも自分がなぜそこにいるのか、記憶がまったく失われている。彼女は持っていたクリーニング店の伝票をてがかりに、自分のマンションまで戻ってくるのだが……。台詞がほとんどない映画で、観ていてかなり眠くなってしまった。肝心なところを見せない演出で観客を欲求不満にさせるのだが、その欲求不満が「早く先を観たい!」という飢餓感につながっていかないように思う。アイデアは悪くないと思うけどね。

 第2話「the wheel」は美しい人形を手に入れた男が、家族もろとも人形の呪いで次々に命を落としていくという話。タイの伝統芸能の世界が舞台になっているのだが、その世界の師弟関係や家族関係などがわかりにくい。それでもこれは3つのエピソード中、もっともスタンダードな怪奇譚として楽しめる。呪いの人形がなぜ誕生したのか由来がわからないが、そんなことお構いなしに物語を進行させていく力強さ。川沿いにある大きな家や芝居の様子など、タイの風俗描写を観ているだけでも面白い。

 第3話の「going home」は主演がレオン・ライとエリック・ツァンという豪華版。取り壊し寸前の古いアパートに引っ越してきた警官親子は、向かいの部屋に半身不随の妻と暮らしているという男と知り合う。やがて警官の息子が行方不明になり、警官は向かいの部屋の中に踏み込む。彼がそこで見たのは、バスダブの中に横たわる男の妻の死体だった……。監督のインタビューによると、もともとの脚本はアクション映画だったらしい。それをアイデアだけ頂戴して、異様な夫婦愛のドラマにしてしまったのだ。作品の完成度は3エピソード中もっとも高いと思うが、子供がどこに消えたのかや、真相を知った警官が夫婦の関係をどう思ったのかなど、すっきりしない後味も残る。死体を演じたユージニア・ユアンは今後の注目株。

(原題:THREE)

4月公開予定 渋谷シネ・アミューズ
配給:角川大映映画
2002年|2時間7分|韓国、タイ、香港|カラー|ヴィスタ
関連ホームページ:http://kadokawa-daiei.com/film/
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