沈黙の標的

2004/02/25 映画美学校第1試写室
スティーヴン・セガール主演のアクション映画だがドラマがスカスカ。
敵が口ほどにもない連中すぎる。あまりにショボイ。by K. Hattori

 中国で遺跡を発掘していたアメリカ人考古学者ロバート・バーンズは、発掘品の輸送が中国マフィアの麻薬運搬に利用されていたことを知る。マフィアは事情を察したバーンズを抹殺しようとして失敗。だがその後もマフィアたちは次々に刺客を放つ。この中でバーンズの妻も殺されてしまった。愛する者を奪った相手への復讐を誓うバーンズは、刺客の言葉や手首の刺青を手がかりにして、組織の中核へと迫っていくのだった……。

 スティーヴン・セガール主演のアクション映画だが、わずか1時間半の映画がいかにも冗長でモッサリしている。監督は『ファイヤーワークス』や『撃鉄 GEKITETZ/ワルシャワの標的』のマイケル・オブロウィッツ。なぜ最近のセガールは、こんな監督とばかり組むのだろうか。これは最初から「ビデオ市場でそこそこ売れればOK!」という、安易な映画作りではないだろうか。『沈黙の戦艦』は面白かったけど、あれから10年以上たって、セガールは『沈黙の戦艦』に匹敵する映画を1本も撮っていない。黒人、インディアン、中国系など、非白人系のマイノリティと組んで何かやるという発想もマンネリ。

 この映画は何よりも脚本が悪い。しかし映画の中で中途半端に登場して消える黒人の囚人“キング”の存在などを考えると、もともとの脚本はこれよりずっと長かったのかもしれない。映画の前半に刑務所映画風の長いドラマがあって、そこでキングが活躍していたのかもしれない。

 一番ガッカリなのは、主人公の敵となる中国人マフィアがあまりにもショボイ組織であることだろう。パリに集まって「これからは我々が世界の麻薬ネットワークを支配するのだ!」と大言壮語していたメンバーは全部で10名。しかしこの10人が、次々に主人公に殺されてしまうのだ。普通はこうした会議に集まるメンバーには、それぞれ数十数百の部下なり組織があると思うではないか。ところが実際はこの会議参加メンバー以下、せいぜい数人の部下しかいないのだ。だからセガールを殺すために、わざわざ組織のリーダーがのこのこ出て行かなければならなくなる。そんなもの、部下のチンピラに任せろよ。

 考えてみれば、麻薬の世界ネットワークを支配する割には、最初に遺跡発掘現場から運び出そうとした麻薬の量もビニール袋2つという中途半端さだった。これっぽっちの量で大騒ぎしているのだから、おそらく最初から奴らはそういう組織だったのだ。バーンズ暗殺に失敗するたび、「今度は本気だ」「次こそ本気だ」「いよいよ本気だぞ」と言う組織のトップは、いったいいつになったら本当の本気を見せるんだ。まったく名ばかりの悪党たちの誇大妄想に振り回されて、主人公の助手や妻は殺されてしまったというわけか。

 ドラマはスカスカで、まるで登場人物に感情移入できない。劇中のセガール同様、観ている方まで無表情にさせてしまう映画です。

(原題:Out for a kill)

3月13日公開予定 シネマメディアージュ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 配給協力:LIBERO
2003年|1時間30分|アメリカ|カラー|ヴィスタ|DOLBY DIGITAL、DOLBY SR
関連ホームページ:http://www.gaga.ne.jp/
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