恋愛適齢期

2004/02/17 ワーナー試写室
ダイアン・キートンのあまりに自然な演技に驚嘆するラブ・コメディ。
泣かせて笑わせる手際の良さ。いい映画観たなぁ。by K. Hattori


 エリカは54歳のバツイチ独身女性。仕事は劇作家でかなりの売れっ子。ある日海辺の自宅兼仕事場に戻った彼女は、そこで半裸の怪しげな男を見てびっくり仰天。自分より年上のその男が、娘のボーイフレンドだと知って二度びっくり。自立した娘がどんな男と付き合おうと文句を言う筋合いではないが、これってあまりにもバランスが悪いんじゃないの? そんな不満が収まらぬうちに、ハリーというそのお相手が心臓発作でぶっ倒れる。いちいちはた迷惑な男なのだ。病院嫌いのハリーは強引に退院を決めるが、医者の目の届くところで安静にしろと言われて、行くところはエリカの家しかない。こうしてエリカは、この図々しい女たらしのハリーと同居せざるを得なくなってしまう……。

 63歳の独身貴族ハリー・サンボーンをジャック・ニコルソンが演じ、人気劇作家エリカ・バリーをダイアン・キートンが演じたラブ・コメディ。キートンはこの映画でアカデミー主演女優賞にノミネートされているが、そのまま受賞してもおかしくない名演技。というより、これはもう演技なんてものを突き抜けて、スクリーンの中にエリカという女性が本当に生きている感じさえする。彼女の自然体の芝居に比べると、ニコルソンは芝居が少々ねちっこいし、妹役のフランシス・マクドーマンドも演技の存在を感じさせすぎる。もちろん彼女は演技をしていないわけではなく、劇中には役者としての見せ場もたっぷりあってそれを楽しんでいる気配も感じられる。特に恋に破れた彼女が大泣きしながらその体験を新作戯曲に取り込んでいくくだりは傑作。恋に溺れながら、どこかでそれを突き放して見てしまう大人の恋心。それが映画を観る人を大いに笑わせ、同時に泣かせてくれるのだ。

 観ていて気持ちいいのは、脚本がよくできているからだろう。台詞がいちいち洒落ている。登場人物たちの人物像も魅力的に描かれている。高血圧、心臓発作、バイアグラ、老眼鏡といったシニア・アイテムを、巧みに恋の小道具にしているのがうまい。老眼鏡が恋を語るなんて、いったい今まで誰が思いついただろうか。製作・監督・脚本はナンシー・メイヤーズ。前作『ハート・オブ・ウーマン』もしゃれたロマンティック・コメディだったけれど、今回の映画はそれ以上にずっと洗練された男と女の恋愛映画になっている。

 恋愛映画を甘ったるくてベタベタしたものだと思ったら大間違い。恋には辛・酸・甘・苦・渋、すべての味が含まれているのです。この映画はそんな恋の味わい深さを、人生の味わい深さと巧みにブレンドした大人向けのカクテル。映画には少しギクシャクしたところもあるが、そこをベテラン俳優たちの芝居で乗り切っていく力強さ!

 キアヌ・リーブスはいい役だが、主役ふたりに貫禄負け。キアヌが演じた医者がもう少しふくらむとさらにいい映画になったと思うけど、完璧な映画は滅多にないものだ。

(原題:Something's Gotta Give)

3月27日公開予定 丸の内ルーブル他・全国松竹東急系
配給:ワーナー・ブラザース映画 宣伝:レオ・エンタープライズ
2003年|2時間8分|アメリカ|カラー|SRD、SDDS、DTS
関連ホームページ:
http://www.warnerbros.co.jp/

DVD:恋愛適齢期
サントラCD:Something's Gotta Give(国内盤)
サントラCD:Something's Gotta Give(輸入盤)
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